上瞼板 Tarsus superior
上瞼板は、上眼瞼の骨格を形成する硬い線維性結合組織板で、以下のような解剖学的特徴と臨床的意義があります。
解剖学的特徴
- 形態:半月状の厚さ約1mmの硬い結合組織板で、水平方向に約25mm、垂直方向に約10mmの大きさを持ちます。
- 位置:上眼瞼の眼球に面する深部に位置し、辺縁部は眼瞼縁から約2mm離れています。
- 付着部位:上縁は眼窩隔膜と融合し、内側および外側は内側眼瞼靭帯と外側眼瞼靭帯を介して眼窩骨に固定されています。
- 組織学:密な線維性結合組織で構成され、弾性が少なく硬度が高いのが特徴です。
- 構造物:
- マイボーム腺(瞼板腺):脂質(メイボーム)を分泌する約25-40個の縦列腺を含みます。
- 瞼板筋(ミュラー筋):交感神経支配の平滑筋で、上瞼板の上縁に付着します。
- 上眼瞼挙筋腱膜:横紋筋である上眼瞼挙筋の腱膜部分が上瞼板の前面に付着します。
臨床的意義
- 眼瞼下垂:上眼瞼挙筋や瞼板筋の機能不全により上瞼板が下方に変位し、視野が制限されます。
- 眼瞼内反・外反:瞼板の変形や線維化により眼瞼縁が内側や外側に湾曲することで発生します。
- マイボーム腺機能不全:瞼板内のマイボーム腺の閉塞や機能低下により、ドライアイの原因となります。
- 霰粒腫(さんりゅうしゅ):マイボーム腺の閉塞による慢性炎症性腫瘤で、瞼板に発生します。
- 麦粒腫(ばくりゅうしゅ):瞼板付近の急性細菌感染で、しばしば痛みを伴います。
- 上瞼板切開術:麦粒腫や霰粒腫の治療、また眼瞼痙攣の治療としての瞼板筋切除に用いられます。
上瞼板は眼の開閉機能を支え、眼球保護と涙液分布の適正化に重要な役割を果たしています。また、眼科手術における重要な解剖学的指標となり、特に眼瞼形成手術や眼瞼下垂手術において適切な理解が必要です。

J0998 (右眼窩の内容物:上方からの図)

J1010 (眼球の矢状断:若干の模式図)

J1011 (視神経の方向の眼窩を通る矢状断面図)

J1012 (右の眼窩隔膜:前方からの図)

J1016 (右眼の眼瞼板を剖出:前方からの図)

J1017 (上眼瞼の断面図)