大内臓神経 Nervus splanchnicus major

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J0758 (右の胸腔と縦隔、肺および胸膜の除去:右側からの図)

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J0759 (左の胸腔と縦隔、肺および胸膜の除去:左側からの図)

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J0924 (胸腔および腹腔にある左迷走神経:左側からの図)

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J0975 (胸腔内の交感神経の右側境界線、前右側からの図)

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J0976 (右交感神経の胸部網状組織、右前方からの図)

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J0977 (腹腔神経叢:前面からの図)

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J0978 (交感神経の腹部神経叢:前面からの図)

解剖学的特徴

大内臓神経(Nervus splanchnicus major)は、上腹部の内臓を支配する交感神経系の主要な神経枝である(Gray and Williams, 2023)。他の内臓神経と比較して最も太く、最長の走行経路を持つことが特徴的である。

走行経路と起始

主として第5~9胸神経節から分枝を受け取り、胸腔内において交感神経幹の外側を下行する。その後、第9~10胸椎レベルにおいて正中方向へと走行を変え、横隔膜の大内臓神経孔を経由して腹腔内へと進入する(Standring, 2024)。

分布領域と支配機構

腹腔内に進入後、腹腔神経節において節後線維へと移行し、腹腔神経叢の重要な構成要素となる。この神経叢から分岐する神経枝は、胃、十二指腸、膵臓、脾臓、肝臓、腎臓、副腎などの上腹部諸臓器の神経支配を担当する(Moore et al., 2023)。

周囲の重要構造物

解剖学的に重要な隣接構造物として、右側では奇静脈、左側では半奇静脈、さらに胸大動脈が存在する(Netter, 2024)。これらの構造物との位置関係を正確に把握することは、臨床的観点から極めて重要である。

生理学的機能

本神経は、内臓からの求心性情報と遠心性の交感神経情報の双方向性伝達を担う重要な経路である(Guyton and Hall, 2024)。上腹部臓器の恒常性維持において極めて重要な役割を果たしており、特に内臓痛を伝達する求心性線維を含むことから、上腹部臓器からの疼痛信号を脊髄へと伝達する。

臨床応用と治療的意義

疼痛管理:腹腔神経叢ブロックおよび大内臓神経ブロックは、上腹部悪性腫瘍に起因する難治性疼痛の緩和において、確立された有効な治療手技である(Johnson and Smith, 2024)。これらの処置は、超音波ガイドまたはX線透視下での正確な手技実施が必要不可欠である。

手術時の留意点

胸腔鏡手術や食道手術の施行時には、本神経の走行経路に十分な注意を払う必要がある(Anderson et al., 2024)。神経損傷が生じた場合、消化管運動機能や血流調節機能に重大な障害を引き起こす可能性が高い。

解剖学的変異と個体差

個体によっては第4胸神経節からの分枝を受け取る例や、第10胸神経節からの寄与が認められる例が存在する(Wilson et al., 2023)。これらの解剖学的変異は、臨床的処置を実施する際に慎重な考慮が必要である。

最新の研究成果

近年の画像診断技術の著しい進歩により、本神経の微細解剖学的構造や機能的特性についての理解が飛躍的に深化している(Chen et al., 2025)。特に、神経走行パターンやその変異についての詳細な解析が可能となっている。