前膨大部神経 Nervus ampullaris anterior
解剖学的特徴と走行
- 前三半規管を支配する卵形嚢膨大部神経の一部で、前庭神経の前枝に含まれる。
- 前半規管の前膨大部稜の感覚上皮から前庭神経節に至り、迷路内を走行する神経線維は双極性ニューロンである。
- 細胞体は前庭神経節(スカルパ神経節)に存在し、そこから中枢側へ向かう神経線維は内耳道を通過して、延髄の前庭神経核群に投射する。
生理的機能
- 内耳の平衡感覚システムの一部として、前三半規管の回転運動を感知し、前庭神経核に伝達する。
- 頭部の角加速度変化に対する感覚情報を処理し、姿勢制御と眼球運動の調節に寄与する。
- 前庭動眼反射(VOR)の重要な神経経路を構成する。
臨床的意義と病態
- 前膨大部神経の障害により、めまい、平衡障害、異常な眼球運動が生じうる。
- 前庭神経炎や前庭神経移行部症候群などの疾患で機能障害が起こる可能性がある。
- メニエール病や頭部外傷後の平衡障害の評価において、機能検査が重要な意味を持つ。
診断と評価法
- 温度刺激検査(カロリックテスト)、ビデオ眼振検査(VNG)、回転検査、vHIT(video Head Impulse Test)などにより機能評価が可能である。

J1062 (成人の膜迷路は部分的に剖出:外側正面からの図)