
1.1 膜構造と血管分布
脊髄軟膜は脊髄表面を直接覆う薄い血管性結合組織膜であり、前正中裂や後正中溝に深く入り込んで脊髄実質と密接に結合している (Gray and Lewis, 2018; Drake et al., 2020)。この膜は豊富な血管網を有し、脊髄への酸素と栄養素の供給において中心的な役割を果たす (Standring, 2020)。
1.2 物質交換機能
脊髄軟膜は中枢神経系の保護と栄養供給に重要な役割を担い、脳脊髄液と脊髄実質間の物質交換を媒介する (Standring, 2020)。軟膜の血管層は脊髄実質内に侵入する血管に沿って延長し、血管周囲腔(Virchow-Robin space)を形成することで、物質の移動経路を提供する (Moore et al., 2019)。
1.3 軟膜小柱
軟膜は微細な結合組織性の突起である軟膜小柱(pia trabeculae)を持ち、これらはクモ膜下腔を横断してクモ膜に達し、脊髄の懸垂と位置の安定性を補助する (Moore et al., 2019)。
2.1 歯状靱帯
歯状靱帯(ligamentum denticulatum)は軟膜の外側縁から発する鋸歯状の結合組織構造で、前根と後根の間に位置し、硬膜に付着することで脊髄を左右に固定している (Snell, 2019; Drake et al., 2020)。この構造は脊髄の安定性維持に不可欠である。
2.2 神経根と軟膜の関係
前根糸、後根糸、および脊髄終糸(filum terminale)は、軟膜の延長部として形成される (Snell, 2019)。軟膜は前根と後根の神経線維を被包し、神経根鞘を形成することで、神経根の保護と支持を提供する (Drake et al., 2020)。
2.3 脊髄溝への進入
脊髄軟膜は脊髄後正中溝および前正中裂に深く入り込み、血管を伴って実質内に進入する (Drake et al., 2020)。この構造により、脊髄深部への血液供給が確保される。
3.1 胚発生
脊髄軟膜は神経堤由来の間葉組織から発生し、その発生過程において血管の発達と密接に関連している (Moore et al., 2019)。この発生学的背景は、軟膜の血管豊富な性質を説明する。