浅腹壁静脈 Vena epigastrica superficialis

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J0627 (胴体の表在静脈、腹側からの図)

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J0631 (右大腿の表面静脈:前面からの図)

解剖学的特徴

起始と走行:

浅腹壁静脈は、浅腹壁動脈に伴行する表在静脈です(Moore et al., 2018)。臍の周囲の皮下組織内で始まり、前腹壁の浅筋膜内を下方へ走行します(Standring, 2020)。鼡径靱帯の上方を通過した後、鼡径靱帯の表層(皮下)を通過して大腿部へと向かいます。

終末と合流:

浅腹壁静脈は、浅腸骨回線静脈と共に、または単独で大腿静脈あるいは大伏在静脈に注ぎ込みます(Netter, 2019)。通常、大腿三角の上部で大伏在静脈の末梢枝として大腿静脈に流入します。

解剖学的関係:

静脈系の連絡:

浅腹壁静脈は、上腹壁静脈や傍臍静脈との吻合を介して、上大静脈系と下大静脈系を結ぶ重要な側副循環路の一部を形成します(Hollinshead, 1982)。

臨床的意義

門脈圧亢進症における側副循環路:

門脈圧亢進症(肝硬変など)では、臍周囲の傍臍静脈が拡張し、浅腹壁静脈を介して血流が増加します(Sherlock & Dooley, 2002)。これにより、臍を中心として放射状に拡張した静脈が腹壁に出現する「Caput medusae(メデューサの頭)」と呼ばれる特徴的な所見が認められることがあります(Bickley, 2017)。

下大静脈閉塞時の側副循環:

下大静脈や腸骨静脈の閉塞時には、浅腹壁静脈を介した側副循環路が発達し、下半身からの静脈還流を代償します(Okuda & Ohbu, 1996)。この場合、腹壁表在静脈の拡張が観察されます。

外科的考慮事項: