腎静脈 Venae renales

J0618 (縦隔胸部の静脈、腹面図)

J0622 (男性の下大静脈、前方からの図)

J0764 (後腹壁にある男性の泌尿器:前方からの図)

J0766 (左腎:前方からの図)

J0767 (右腎:後方からの図)

J0770 (新生児の腎臓:前方からの図)
腎静脈は、腎臓から血液を運び出す重要な血管であり、腎循環系の最終段階を担っています。以下に解剖学的特徴と臨床的意義を詳述します(Gray and Standring, 2021; Netter, 2019):
解剖学的特徴
- 腎静脈は左右とも腎動脈の腹側(前方)に位置し、腎門(hilum)で葉間静脈、弓状静脈、小葉間静脈などの複数の静脈が合流して形成されます(Drake et al., 2020)。
- 通常、第二腰椎(L2)の高さで下大静脈に直角に流入する太い静脈です。腎静脈の直径は約1.0~1.5cmで、腎動脈よりも太いことが特徴です(Moore et al., 2018)。
- 左側の腎静脈は右側より約6~10cm長く(約7.5cm)、大動脈の前面を横切って下大静脈に到達します。これは左腎が右腎よりも高位に位置し、下大静脈が体の右側に存在するためです(Sinnatamby, 2011)。
- 右側の腎静脈は比較的短く(約2.5cm)、通常は右腎からのみ血液を集めます(Moore et al., 2018)。
- 左側の腎静脈には複数の静脈が流入します(Ozkan et al., 2016):
- 上位腰静脈および上行腰静脈
- 下横隔静脈と左副腎静脈の共同幹
- 左精巣静脈(男性)または左卵巣静脈(女性)
- 成人や胎児の腎静脈は、通常左右ともに1本ですが、約15~30%の症例では複数存在することがあります(Yi et al., 2012)。
- 腎静脈の根(腎内分枝)は解剖学的バリエーションが多く、上下の2本(約60%)または上中下の3本(約30%)に分かれていることが最も一般的です(Zhu et al., 2015)。
解剖学的変異
- 大動脈後性左腎静脈(Retroaortic left renal vein):左腎静脈が大動脈の後方を横断する変異で、約2~3%の頻度でみられます(Karaman et al., 2007)。
- 輪状左腎静脈(Circumaortic venous ring/collar):左腎静脈が大動脈の前後を取り囲むように2本存在する変異で、約5~8.7%の頻度でみられます(Reed et al., 2009)。
- 重複腎静脈(Duplicated renal vein):複数の腎静脈が存在する変異で、右側に多く見られます(約15~30%)(Yi et al., 2012)。
臨床的意義
- ナットクラッカー症候群:左腎静脈が上腸間膜動脈と大動脈の間で圧迫されることによる病態で、側副血行路の発達、血尿、左側精索静脈瘤などの症状を引き起こします(Kurklinsky and Rooke, 2010)。
- 腎静脈血栓症:腎臓病、特にネフローゼ症候群や腎細胞癌などで発生リスクが高まります(Asghar et al., 2012)。
- 外科的意義:腎移植、腎摘出術、大血管手術などの際に腎静脈の解剖学的変異の把握が重要です(Sampaio and Aragão, 1990)。
- 画像診断:CT血管造影や超音波検査などで腎静脈の評価が可能です(Kawamoto et al., 2008)。