腰静脈 Venae lumbales [III et VI]

J0618 (縦隔胸部の静脈、腹面図)
解剖学的概要
腰静脈は、腰部の静脈系における重要な構成要素であり、下大静脈系の後側壁枝として機能します(Gray, 2020; Standring, 2020)。通常、左右各4対(第1〜第4腰静脈)が存在しますが、臨床的に特に重要なのは第3腰静脈および第4腰静脈です(Moore et al., 2018)。
走行と構造
- 起始:腰静脈は椎体の側面から起始し、腰部の後腹壁に沿って走行します(Netter, 2019)。
- 走行経路:椎体の側面を腹側に沿って前方に向かって走行し、腰方形筋および大腰筋の後方を通過します(Standring, 2020)。
- 合流:左右両側とも下大静脈の後外側面に合流します(Gray, 2020)。ただし、左側の腰静脈は下大静脈までの距離が長いため、しばしば上行腰静脈を介して合流することがあります(Moore et al., 2018)。
- 吻合:腰静脈は椎骨静脈叢、上行腰静脈、奇静脈系(右側)および半奇静脈系(左側)と吻合し、重要な側副循環路を形成します(Standring, 2020)。
解剖学的変異
腰静脈の解剖には個体差が多く見られます(Tubbs et al., 2016):
- 数の変異:4対より多い場合や少ない場合があります。
- 合流パターンの変異:下大静脈への直接合流ではなく、共通幹を形成して合流する場合や、上行腰静脈を介して間接的に合流する場合があります。
- 左右非対称:左側の腰静脈は右側よりも長く、より複雑な走行を示すことが多いです(Moore et al., 2018)。
臨床的意義
1. 側副循環路としての役割
腰静脈は、下大静脈の閉塞や圧迫時に重要な側副循環路として機能します(Roche-Nagle et al., 2006)。椎骨静脈叢や奇静脈系との吻合を介して、血液を上大静脈系へと迂回させることができます。
2. 外科手術における考慮事項
- 後腹膜手術:腰椎手術、大動脈手術、腎摘出術などの後腹膜アプローチの際、腰静脈の損傷は重大な出血を引き起こす可能性があります(Inoue et al., 2014)。