背側中手静脈 Venae metacarpales dorsales; Dorsal metacarpal veins

J0613 (右手甲の表在静脈)
解剖学的構造
起始と走行
背側中手静脈は、手背の静脈系において重要な役割を担う3本の静脈です。これらは第2〜5指の背側指静脈(venae digitales dorsales)が合流することで形成されます(Standring, 2020)。具体的には:
- 第1背側中手静脈:第2指と第3指の背側指静脈の合流により形成
- 第2背側中手静脈:第3指と第4指の背側指静脈の合流により形成
- 第3背側中手静脈:第4指と第5指の背側指静脈の合流により形成
解剖学的位置関係
背側中手静脈は手背筋膜(fascia dorsalis manus)の表層、すなわち皮下組織内に位置しています(Moore et al., 2017)。これらの静脈は中手骨間の領域を近位方向に走行し、手背静脈網(rete venosum dorsale manus)に流入します。
静脈連絡
背側中手静脈は以下の静脈系と連絡しています(Drake et al., 2019):
- 近位側:手背静脈網を介して橈側皮静脈(vena cephalica)や尺側皮静脈(vena basilica)に連絡
- 遠位側:背側指静脈から血液を受ける
- 深層との連絡:中手骨頭間静脈(venae intercapitulares)を介して手掌側の深部静脈系と交通
生理学的機能
背側中手静脈は手指および手背からの静脈還流において重要な役割を果たしています(Standring, 2020):
- 手指の背側から血液を集め、手背静脈網を経由して前腕の表在静脈へ運搬
- 手掌側の深部静脈系との連絡により、静脈還流の代替経路を提供