中手骨頭間静脈 Venae intercapitulares manus

J0613 (右手甲の表在静脈)

J0614 (右前腕の表在静脈:前方からの図)
解剖学的特徴
中手骨頭間静脈は、手の静脈系における重要な吻合路であり、掌側と背側の静脈系を連絡する役割を担っています(Gray, 2020; Moore et al., 2018)。
- **位置と走行:**各指間腔において、中手骨頭(metacarpal heads)の間を掌側から背側へ貫通するように走行します。通常、第1~4指間腔に3~4本存在します(Standring, 2020)。
- **起始と終止:**掌側では掌側中手静脈叢(palmar metacarpal venous plexus)または総掌側指静脈(common palmar digital veins)から起始し、背側では手背静脈網(dorsal venous network of hand)に注ぎます(Moore et al., 2018)。
- **解剖学的関係:**中手骨頭間靭帯(deep transverse metacarpal ligaments)の近傍を通過し、指間筋(interosseous muscles)や虫様筋(lumbricals)に隣接して走行します(Standring, 2020)。
- **静脈弁:**一般的に弁を持ち、血液の逆流を防ぎ、掌側から背側への一方向性の血流を維持します(Gray, 2020)。
血管網との連絡
- 掌側では、浅掌静脈弓(superficial palmar venous arch)および深掌静脈弓(deep palmar venous arch)と連絡します(Moore et al., 2018)。
- 背側では、橈側皮静脈(cephalic vein)や尺側皮静脈(basilic vein)の起始部を形成する手背静脈網に流入します(Standring, 2020)。
臨床的意義
- **静脈還流経路:**手の静脈血は主に背側の静脈網を通じて還流されますが、中手骨頭間静脈はこの還流経路において重要な役割を果たします。掌側の深部静脈系から表層の背側静脈系への血液移動を可能にします(Netter, 2018)。
- **静脈穿刺部位:**手背静脈網は静脈穿刺や静脈ラインの確保に頻繁に使用されますが、中手骨頭間静脈を介した掌側からの還流も考慮する必要があります(Phillips et al., 2014)。
- **外傷と出血:**手の外傷、特に指間部の深い裂傷では、中手骨頭間静脈が損傷される可能性があります。これらの静脈は比較的太く、損傷時には著明な出血を来すことがあります(Wolfe et al., 2017)。
- **感染の波及経路:**掌側の感染(例:化膿性腱鞘炎)が中手骨頭間静脈を介して手背へ波及する経路となり得ます(Patel, 2016)。
- **静脈血栓症:**まれですが、手の静脈血栓症において中手骨頭間静脈が関与することがあります。特に反復性の手の使用や外傷後に発症することがあります(Hingorani et al., 2012)。
- **手術時の考慮事項:**手の手術、特に中手骨や指間腔の手術時には、中手骨頭間静脈の存在を認識し、不必要な損傷を避ける必要があります。適切な止血処置が重要です(Wolfe et al., 2017)。
中手骨頭間静脈は、手の静脈系における重要な吻合路として、掌側と背側の血液循環を結び、静脈還流の効率化に寄与しています。臨床的には、外傷、感染、静脈アクセスなど様々な場面でその解剖学的知識が重要となります(Moore et al., 2018; Standring, 2020)。
参考文献