腕頭静脈は人体の静脈系における重要な構成要素で、以下の特徴を持ちます:
まれに、左腕頭静脈が異常な経路を示す例があります。これは大動脈後性左腕頭静脈と呼ばれ、左腕頭静脈が上行大動脈の後ろを横切って右腕頭静脈に合流する状態を指します。
『日本人のからだ(大久保真人 2000)』によると
上大静脈は正常に形成されていますが、その源流である左腕頭静脈が異常な経過を示す例が報告されています。その例では、左腕頭静脈が上行大動脈の後ろを横切って右腕頭静脈に合流しています。これは大動脈後性左腕頭静脈(postaortic left innominate or brachiocephalic vein)と呼ばれています。このような例は非常に稀で、海外の文献を含めて13例、日本ではAdachi(1933)の2例、北村ら(1981)、吉田・福山(1975)、Yoshida et al. (1984)、楠元ら(1992)など数例の報告しかありません。
この異常例の特徴は、左腕頭静脈が大動脈弓の下で上行大動脈の後ろを左から右に横切った後、右腕頭静脈に合流して上大静脈が形成されることです。しかし、左腕頭静脈が必ずしも大動脈弓の下を通るわけではなく、上を通ることもあります。
左腕頭静脈の経過については、Adachi(1933)による2型、北村ら(1981)による4型の分類があり、Yoshida et al. (1984)は後者に第5型を追加しました(図96)。それによると、海外の報告例を含む13例の左腕頭静脈の経過は以下の通りです。
I型: 大動脈弓から分岐する各動脈の腹側を通る型(正常型)。
II型: 大動脈弓から分岐する各動脈の背側を通る型(1例)。
III型: 動脈管索の内側(腹側)を通る型、足立のI型(Adachi, 1933) (7例)。
IV型: 動脈管索の外側(背側)を通る型、足立のII型(Adachi, 1933) (1例)。
V型: 大動脈後性左腕頭静脈(III型およびIV型)に加えて、他の循環器系の異常を伴う型(4例)。