総腸骨動脈

総腸骨動脈は、大動脈が第4腰椎の高さで分岐し、仙腸関節の前方で内腸骨動脈と外腸骨動脈に分岐するまでの部分です。この動脈には重要な枝は存在しません。

日本人のからだ(秋田恵一 2000)によると

総腸骨動脈は、第4腰椎下端の高さで腹大動脈から分岐し始まります。大動脈の分岐部は、大体第4腰椎中部1/3から第5腰椎上部1/3の高さに位置します(84%、Anson and McVay, 1936)。

総腸骨動脈が欠損し、内・外腸骨動脈が腹大動脈から直接起始する例が報告されています。

Adachi(1928 b)は、左総腸骨動脈欠損例について、377体754側中に1側見られたと報告しました。宮下(1935)、嶋田(1944 a)、森田(1948)も同様の事例を報告しています。これらの例では、いずれも右の総腸骨動脈も非常に短いです。助廣・小柳(1968)は、総腸骨動脈を介さずに腹大動脈から直接分岐する左右の内・外腸骨動脈、および右外腸骨静脈が直接下大静脈に合流する例を報告しました。

成人の総腸骨動脈の太さは、表51に示されています。Adachi(1928 b)によると、胎児から小児にかけては左よりも右が太いですが、成人になると左右差がなくなるとのことです。この傾向は、下腹壁動脈および臍動脈についても同じだと述べられています(表52)。

総腸骨動脈の長さについては、表53によれば、かなりのバラつきがあります。Adachi(1928 b)によると、男性の平均長さは41.6±0.97mm(118体236側中)、女性の平均長さは41.6±1.82mm(36体72側中)でした。一方、男女合わせた右側の平均長さは43.0±1.15mm、左側は46.8±1.26mmでした。したがって、右側よりも左側が約4mm長いということになります。

表51 成人における総腸骨動脈の太さ(25例中)

表51 成人における総腸骨動脈の太さ(25例中)

径(mm) 6 7 8 9 10 11
男性 0 2 2 0 2 1
0 1 4 1 1 1
女性 0 3 0 1 1 0
1 2 0 1 1 0
1 8 6 3 5 2

(Adachi, 1928 b)

表52 胎児と新生児における総腸骨動脈とその枝の左右差

表52 胎児と新生児における総腸骨動脈とその枝の左右差

右が太い 左右径がおなじ 左が太い
総腸骨動脈 15 12 2 29
下腹壁動脈 13 14 2 29
臍動脈 12 17 0 29
外腸骨動脈 1 27 1 29

(Adachi, 1928 b)