

起始と走行
右結腸動脈は上腸間膜動脈から分岐する血管で、通常、回結腸動脈の起始部より近位で分岐します(Moore et al., 2018)。しかし、個体差が大きく、約10-15%の症例では独立した右結腸動脈が欠如しており、その場合は中結腸動脈や回結腸動脈の枝が代償的に上行結腸への血液供給を行います(Michels et al., 1965)。
分岐後、右結腸動脈は後腹膜腔を右方向に走行し、上行結腸に向かいます。走行中は腹膜の後方(後腹膜)に位置し、右尿管および右精巣動脈(または卵巣動脈)の前方を横切ります(Standring, 2020)。
分布と吻合
右結腸動脈は上行結腸の中央部に到達すると、以下のように分岐します:
これらの吻合により、結腸の血液供給における豊富な側副路が形成され、一つの動脈が閉塞した場合でも血流が維持される仕組みとなっています(Griffiths, 1956)。
血液供給領域
右結腸動脈は主に以下の領域に血液を供給します:
臨床的意義
1. 結腸切除術における考慮事項
右半結腸切除術や回盲部切除術において、右結腸動脈の解剖学的変異を術前に把握することは極めて重要です(Shatari et al., 2007)。術中に適切な血管処理を行うことで、吻合部の血流不全や腸管壊死を予防できます。
2. 虚血性腸炎
右結腸動脈の血流障害は、上行結腸の虚血性腸炎の原因となります(Brandt and Boley, 2000)。特に動脈硬化や血栓塞栓症により急性の血流低下が生じると、腹痛、血便、発熱などの症状が出現します。辺縁動脈の吻合が不十分な症例では、より重篤な虚血に陥る危険性があります。