中側副動脈 Arteria collateralis media

J0577 (右上腕の動脈、背面からの図)

J0578 (右前腕第1層の動脈、手掌側図)
解剖学的特徴
起始と走行
中側副動脈は上腕深動脈(深上腕動脈)の枝の一つで、上腕骨の背面、上腕深動脈が橈骨神経と共に橈骨神経溝を通過する部位の近傍から分岐します(Standring, 2020)。この動脈は上腕三頭筋の外側頭と内側頭の間を下行し、上腕遠位部へと向かいます(Moore et al., 2018)。
分布域と枝
- 上腕三頭筋への筋枝を分岐し、特に内側頭と長頭に血液を供給(Lippert & Pabst, 2017)
- 下行中に骨膜枝を出し、上腕骨後面に栄養を供給(Netter, 2018)
- 皮枝を分岐し、上腕後面の皮膚に分布(Standring, 2020)
- 肘関節の後面で肘関節動脈網(rete articulare cubiti)に合流し、上尺側反回動脈、骨間反回動脈などと吻合(Moore et al., 2018)
周辺構造との関係
中側副動脈は橈骨神経と密接な関係にあり、橈骨神経が橈骨神経溝を通過する際に伴走します(Standring, 2020)。また、上腕三頭筋の筋頭間を通過するため、筋損傷時や手術の際に重要な解剖学的ランドマークとなります(Hoppenfeld & DeBoer, 2020)。
臨床的意義
側副循環
中側副動脈は上腕深動脈の他の枝(橈側側副動脈、上尺側側副動脈)とともに、肘関節周囲の動脈網を形成します(Moore et al., 2018)。上腕動脈に閉塞や損傷が生じた場合、この側副循環路が重要な役割を果たし、前腕への血流を維持することができます(Schünke et al., 2016)。
外科的考慮事項
- 上腕骨骨折の手術アプローチ時、特に後方アプローチでは本動脈の損傷に注意が必要(Hoppenfeld & DeBoer, 2020)
- 上腕三頭筋の筋肉内注射や生検の際、本動脈の走行を考慮する必要がある(Moore et al., 2018)
- 肘関節の外科手術(人工肘関節置換術など)では、肘関節動脈網の一部として温存が重要(Netter, 2018)
画像診断