腱索(心臓の)Chordae tendineae cordis

J0542 (設置された二尖弁(僧帽弁):切断された図)

J0546 (拡大した心臓の左室(左心室):腹部の左側からの図)
解剖学的構造
腱索は、心室内腔に突出する乳頭筋と房室弁(左房室弁である僧帽弁、および右房室弁である三尖弁)の弁尖を連結する、細く強靭な線維性結合組織です(Gray, 2020; Netter, 2018)。これらは腱様の外観を呈し、心臓のポンプ機能において極めて重要な役割を果たします。
構造的特徴:
- 各弁尖には複数の腱索が付着しており、乳頭筋から放射状に伸びている(Moore et al., 2017)。
- 腱索は主に膠原線維(コラーゲン線維)で構成され、高い引張強度を持つ(Lim & Boughner, 1975)。
- 太さや長さは付着部位により異なり、弁尖の遊離縁に付着するものと、弁尖の心室面に付着するものがある(Anderson et al., 2000)。
- 僧帽弁では前尖と後尖に、三尖弁では前尖・後尖・中隔尖にそれぞれ腱索が分布する(Carpentier et al., 2010)。
血管分布と神経支配:
- 腱索自体への血管分布は乏しく、周囲の心内膜からの栄養供給に依存している(Roberts, 1970)。
- 神経線維の分布も限定的であり、主に機械的受容器が存在する(Lam et al., 1970)。
生理学的機能
腱索は心周期において以下の重要な役割を担います(Levine & Schwammenthal, 1997):
- **弁の逆流防止機構:**心室収縮期(収縮期)において、心室内圧が急激に上昇する際、房室弁の弁尖が心房側へ反転(逸脱)するのを物理的に阻止します。
- **弁尖の適切な位置保持:**乳頭筋の収縮と協調して、弁尖を最適な位置に保ち、完全な弁閉鎖を実現します。
- **心室形態の維持:**腱索-乳頭筋-心室壁の連続性により、心室の幾何学的形状を保ち、効率的な収縮を可能にします(Joudinaud et al., 2007)。
- **弁尖への応力分散:**心室収縮時の圧力負荷を弁尖全体に均等に分散させ、特定部位への過度な負担を軽減します(Kunzelman et al., 1993)。
臨床的意義
腱索断裂(Chordal rupture):