甲状腺

甲状腺は内分泌腺の一つで、前頚部の後頭前側に位置しています。その形状は不規則な楕円形で、成人の大きさは約25~40gです。甲状腺が分泌するホルモンには2種類あり、それぞれ異なる役割があります。

一つ目のホルモンはヨウ素を含むアミノ酸誘導体で、全身の物質代謝を亢進します。ヨウ素原子の数によってT4(チロキシン)とT3(3-ヨードチロニン)と区別されます。このホルモンは甲状腺濾胞を形成する濾胞細胞から分泌されます。

二つ目のホルモンはカルチトニン(またはチロカルチトニン)と呼ばれるポリペプチドで、血中のカルシウムイオンの濃度を低下させる働きがあります。このホルモンは濾胞の間または周辺に存在する濾胞傍細胞から分泌されます。

甲状腺の中には濾胞と呼ばれる構造単位があり、細胞はその周辺に1層に並んでいます。内部はコロイドという濃厚な蛋白溶液で満たされています。この蛋白はヨウ素を含む糖蛋白で、チログロブリンと呼ばれます。

甲状腺は下垂体前葉ホルモンの一種であるTSH(甲状腺刺激ホルモン)によって刺激されます。TSHの刺激により、細胞表面に偽足状の突起が現れ、コロイドが取り込まれます。これによりチログロブリンが分解され、甲状腺ホルモンであるT4およびT3が生成されます。

これらのホルモンは低分子で、細胞内を拡散した後、基底側に運ばれて濾胞の近くの毛細血管に吸収されます。また、甲状腺には濾胞傍細胞と呼ばれる細胞も存在します。これらの細胞は動物によって発達が異なり、ヒトでは非常に少ないです。これらの細胞はカルシウムを低下させるホルモンを分泌し、その役割を果たします。

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J0762 (甲状腺、喉頭と気管に対する位置:前方からの図)

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J0763 (甲状腺、近隣の臓器に対する位置:背面からの図)

日本人のからだ(村上 弦 2000)によると

(1)外景(図154)

甲状腺の形状は、H字形または蝶型(70%)、馬蹄形または半月形(16%)、凹字形(下縁が直線)(14%)の3つに分けられます。甲状腺峡部を欠いた二分甲状腺は全体の12.8%に見られ、その1/3は「葉間靭帯」と呼ばれる結合組織により、見かけ上の連絡を保つ仮性峡部の形態を示しています(尾関, 1911)。錐体葉については、約80%に出現するとの報告があります(図154)(執行, 1923)。また、甲状腺片側葉欠損の報告も存在します(田中, 1974)。

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図154 錐体葉の例(金子, 1982改変)

図154 錐体葉の例