卵巣間膜 Mesovarium♀

卵巣間膜とは、子宮広間膜の後方に位置する漿膜性の二重のヒダで、卵巣を骨盤腔内に吊り下げる支持構造です。解剖学的には、卵巣間膜は子宮広間膜の後葉から派生し、卵巣の卵巣門(hilum)に付着します(Gray and Lewis, 2020)。この二重の腹膜ヒダの間には、卵巣動静脈、リンパ管、神経が走行しています。

解剖学的特徴

卵巣間膜の長さは通常3〜4cm程度で、その厚さは1〜2mm程度です(Moore et al., 2018)。卵巣間膜は卵巣靭帯(子宮卵巣靭帯)と卵巣提索(骨盤漏斗靭帯)とともに卵巣の位置を維持する役割を担っています。しかし、卵巣間膜には伸展性があるため、卵巣は骨盤腔内でやや可動性を持ちます(Standring, 2021)。

臨床的意義

臨床的には、卵巣間膜は婦人科手術の際に重要な解剖学的指標となります。例えば、卵巣嚢腫や卵巣腫瘍の摘出術、あるいは卵巣摘出術(卵巣切除術)において、卵巣間膜の処理が必要となります(Berek and Novak, 2019)。また、卵巣間膜は卵巣捻転の際に捻じれる構造であり、この捻転により血流が遮断されると急性腹症の原因となります。さらに、卵巣間膜内に発生する腫瘍(間膜嚢腫など)や子宮内膜症病変が臨床上問題となることがあります(Hoffman et al., 2022)。

参考文献

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J0793 (子宮、卵管および卵巣:後方からの図)

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J0794 (右の卵巣と卵管がその位置で横に切断:上方から見た図)

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J0796 (女性の骨盤臓器、左側の骨盤壁を除去:左側からの図)