
外側臍ヒダ(Plica umbilicalis lateralis)は、下腹壁動脈(inferior epigastric artery)および下腹壁静脈(inferior epigastric vein)が腹膜後方を走行することによって形成される腹膜のヒダである(Standring, 2020)。この血管束は腹直筋の外側縁に沿って走行し、内鼡径輪(deep inguinal ring)の内側から臍に向かって斜め上方に進む(Moore et al., 2018)。
下腹壁動脈は外腸骨動脈から分岐し、内鼡径輪の内側を通過した後、腹直筋鞘の後面を上行する(Netter, 2018)。この走行により形成される外側臍ヒダは、内側臍ヒダ(正中臍ヒダを含む)とともに腹膜腔の下部を特徴づける重要な解剖学的ランドマークとなる(Drake et al., 2019)。
腹腔内から観察すると、外側臍ヒダは腹壁の下部に明瞭な隆起として認識され、その外側には外側鼡径窩(lateral inguinal fossa)、内側には内側鼡径窩(medial inguinal fossa)が形成される(Skandalakis et al., 2004)。これらの窩は鼡径部ヘルニアの発生部位と直接関連している。
鼡径ヘルニアの分類における役割
外側臍ヒダは鼡径ヘルニアの解剖学的分類において極めて重要な指標となる(Kingsnorth and LeBlanc, 2003)。間接鼡径ヘルニア(indirect inguinal hernia)は外側臍ヒダの外側、すなわち外側鼡径窩から発生し、内鼡径輪を通って鼡径管内に進入する(Fitzgibbons and Forse, 2015)。一方、直接鼡径ヘルニア(direct inguinal hernia)は外側臍ヒダの内側、内側鼡径窩のヘッセルバッハ三角(Hesselbach's triangle)から直接腹壁を押し出す形で発生する(Rutkow, 2003)。
この解剖学的区別は、ヘルニアの病態生理および治療方針の決定に直接影響を与える。間接ヘルニアは先天的な腹膜鞘状突起の閉鎖不全に起因することが多いのに対し、直接ヘルニアは後天的な腹壁の脆弱化によって生じることが多い(Jenkins and O'Dwyer, 2008)。
腹腔鏡下手術における重要性
腹腔鏡下鼡径ヘルニア修復術(laparoscopic inguinal hernia repair)、特にTAPP(transabdominal preperitoneal)法やTEP(totally extraperitoneal)法において、外側臍ヒダは最も重要な解剖学的ランドマークの一つである(Bittner et al., 2011)。術中に外側臍ヒダを同定することで、ヘルニアの種類を正確に判別し、適切な修復範囲を決定することができる(Chowbey et al., 2006)。
また、腹腔鏡下手術では、外側臍ヒダに含まれる下腹壁血管の損傷を避けることが重要である(Heniford et al., 2003)。トロッカー挿入時やメッシュ固定時にこれらの血管を損傷すると、significant な出血や術後の腹壁血腫を引き起こす可能性がある(Kadar et al., 1993)。特にメッシュの固定には、下腹壁血管の走行を考慮した慎重な手技が求められる(LeBlanc, 2007)。
その他の臨床的考慮事項
下腹壁動脈は腹直筋への主要な血液供給源であり、腹壁再建術や腹直筋皮弁(rectus abdominis flap)を用いた再建手術において重要な役割を果たす(Grotting et al., 1989)。また、帝王切開や下腹部手術の際には、この血管の走行を理解することが術中出血のリスクを最小化するために不可欠である(Shnaekel et al., 2017)。