正中臍ヒダ Plica umbilicalis mediana

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J0728 (男性の前腹壁(下半分):後方からの図)

定義と発生学的背景

正中臍ヒダは、前腹壁の正中線に沿って垂直に走る繊維状の構造物である。これは、胎児期に膀胱と臍をつないでいた管である尿膜管(urachus)の閉鎖後の線維性の遺残である(Moore et al., 2018)。発生学的には、尿膜管は胎生期の尿膜(allantois)の一部で、胎児の膀胱頂部から臍帯基部まで伸びていた。出生後、この管は通常閉鎖し、正中臍靭帯(ligamentum umbilicale medianum)となる(Sadler, 2019)。

解剖学的位置

正中臍ヒダは腹膜の襞として膀胱頂から臍に向かって上行し、腹壁腹膜の内側面で識別できる(Standring, 2020)。この構造は腹膜の下を走り、正中線上で腹直筋の後面に位置する。両側には内側臍ヒダ(閉鎖された臍動脈の遺残)が存在する。Gray(2021)によれば、この構造は正常な成人では約3-5mmの幅を持つ線維性の索状物として観察される。

臨床的意義

尿膜管が完全に閉鎖しない場合、尿膜管遺残、尿膜管洞、尿膜管嚢胞、または尿膜管瘻などの先天性異常を引き起こすことがある(Netter, 2018)。特に尿膜管嚢胞は感染を起こし、下腹部痛や臍からの排膿の原因となり得る。Ashley(2017)の研究によれば、尿膜管異常の発生率は成人で約1/5,000程度と報告されている。また、長期間持続する尿膜管遺残は稀に悪性転化し、尿膜管癌を発症することがある(Brunicardi et al., 2019)。腹腔鏡手術や開腹手術では、正中臍ヒダは解剖学的ランドマークとして重要であり、特に下腹部の手術アプローチを計画する際に考慮される(Townsend et al., 2022)。

参考文献

東洋医学との関連性