会陰筋 Musculi perinei

J0801 (男性の肛門挙筋:上面からの図)

J0802 (男性の肛門挙筋:左側からの図)

J0803 (男性の右側肛門挙筋と尿生殖三角:後上方からの図)

J0804 (男性の尿生殖三角筋:下方からの図)

J0805 (男性の会陰筋:下方からの図)

J0806 (女性の会陰筋:下から見た図)
会陰筋は、骨盤底を形成し、骨盤出口を閉鎖する重要な筋群です。解剖学的には骨盤隔膜と尿生殖隔膜を構成し、内臓を支持するとともに排尿・排便・性機能の調節に重要な役割を果たします(Drake et al., 2020)。これらの筋は、機能的および位置的に肛門筋群と尿生殖筋群の2つに分類されます。
肛門筋群は主に肛門の開閉と骨盤内臓の支持に関与し、尿生殖筋群は排尿や性機能の調節に関与します。臨床的には、これらの筋の機能不全は尿失禁、便失禁、骨盤臓器脱などの病態と密接に関連しています(Standring, 2021)。
肛門筋群と尿生殖筋群の構造と機能
肛門筋群(1~3)と尿生殖筋群(4~8)の詳細は以下の通りです:
肛門筋群
- (1)肛門挙筋:骨盤底の主要な支持構造であり、小骨盤の内壁(恥骨、坐骨棘、閉鎖筋膜)から起始し、肛門管や直腸に停止します(Moore et al., 2022)。閉鎖筋膜からの線維は肛門挙筋腱弓を形成します。解剖学的に腸骨尾骨筋、恥骨尾骨筋、恥骨直腸筋の3部に区分され、前部線維は尿生殖洞にも付着し、男性では前立腺挙筋、女性では恥骨膣筋と呼ばれます。骨盤内臓の支持、直腸肛門角の維持による便失禁の防止、排便時の協調運動に重要な役割を果たします。臨床的には分娩時の損傷や加齢による弱化が骨盤臓器脱や便失禁の原因となります。
- (2)尾骨筋:肛門挙筋の後方に位置し、仙棘靱帯の内面から起始して尾骨に停止する小筋です。骨盤底の後方部分の補強と尾骨の可動性に関与しています。臨床的には尾骨痛(coccygodynia)との関連が指摘されています(Netter, 2019)。
- (3)外肛門括約筋:肛門挙筋の下方に位置し、肛門管を取り囲む輪状の横紋筋です。皮下部、浅部、深部の3層構造を持ちますが、その境界は明瞭ではありません(Raychaudhuri and Cahill, 2008)。筋後端と尾骨尖端を結ぶ靱帯は肛門尾骨靱帯と呼ばれます。随意的な肛門括約機能を担い、便失禁防止に重要です。括約筋の損傷や神経障害は便失禁の主要な原因となります。
尿生殖筋群
- (4)深会陰横筋:尿生殖隔膜の主要部分を構成し、尿生殖三角を閉鎖する三角形の筋です。坐骨枝から起始し、会陰腱中心に停止します(Drake et al., 2020)。男性では尿道球腺(前立腺球部尿道腺)、女性では大前庭腺(バルトリン腺)を含みます。尿道や膣の支持と固定に寄与します。
- (5)尿道括約筋:骨盤底における重要な括約筋で、男性では尿道膜様部を、女性では尿道と膣を取り囲む輪状の筋です(Standring, 2021)。随意的な排尿制御に不可欠で、この筋の機能不全は腹圧性尿失禁の主因となります。前立腺手術や分娩時の損傷によって機能障害を生じることがあります。
- (6)浅会陰横筋:坐骨結節から起始し、会陰腱中心に停止する小筋で、深会陰横筋の浅層に位置します。会陰の安定化に寄与しますが、しばしば欠如していることもあります(Kenhub, 2022)。
- (7)坐骨海綿体筋:坐骨枝から起始し、陰茎(または陰核)海綿体を包む薄い筋です。勃起機能に関与し、収縮することで陰茎海綿体からの静脈還流を抑制し、勃起の維持に寄与します(Moore et al., 2022)。臨床的には早漏治療の一環としてこの筋の訓練が行われることがあります。
- (8)球海綿体筋:会陰腱中心から起始し、男性では尿道球を、女性では膣前庭球を包む筋です。外肛門括約筋とは会陰腱中心を介して連続しています(Netter, 2019)。男性では射精時の尿道内容物の排出、女性では膣の収縮に関与します。また、排尿終末時の尿道内残尿の排出(ミルキング)にも関与しています。
神経支配と臨床的意義
神経支配については、肛門挙筋と尾骨筋(1と2)はS3-S4由来の陰部神経叢の直腸枝により、外肛門括約筋から球海綿体筋までの筋(3~8)はS2-S4由来の陰部神経によりそれぞれ支配されます(Raychaudhuri and Cahill, 2008)。臨床的には、仙髄神経障害や陰部神経損傷は会陰筋群の機能不全を引き起こし、尿失禁や便失禁などの症状の原因となります。
参考文献
- Drake, R.L., Vogl, A.W. and Mitchell, A.W.M. (2020) Gray's Anatomy for Students. 4th edn. Philadelphia: Elsevier. → 医学生向けの標準的解剖学教科書で、会陰筋の基本的な解剖学と機能について明確な説明を提供