亀頭冠(陰茎亀頭の)Corona glandis penis

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J0787 (男性の骨盤臓器の正中矢状断:左側からの右半分の図)

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J0788 (陰茎、球海綿体筋および筋膜と皮膚の一部を除去:下方からの図)

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J0789 (陰茎海綿体と尿生殖三角:下方からの図)

亀頭冠(Corona glandis penis)は、陰茎亀頭の基底部に位置する隆起した縁で、亀頭と陰茎体部の境界を形成する重要な解剖学的構造です(Moore et al., 2018)。この部位は性的感覚において特に重要な役割を果たします(Halata and Munger, 1986)。

解剖学的構造

1. 肉眼解剖学的特徴

亀頭冠は亀頭の基部を取り囲む環状の隆起として観察され、陰茎海綿体の遠位端と亀頭海綿体を明確に区別します(Standring, 2020)。この隆起の直後方には包皮環状溝(Coronal sulcus)が形成され、包皮が亀頭に移行する部位となります(Cold and Taylor, 1999)。亀頭冠の高さは個人差が大きく、約2-5mmの範囲にあります(Yang et al., 2008)。

2. 組織学的構造

亀頭冠を覆う粘膜は重層扁平上皮からなり、角化層が薄いかほとんど存在しません(Taylor et al., 1996)。上皮下には豊富な結合組織と血管叢が存在し、性的興奮時の充血を可能にします(Shafik et al., 2006)。また、亀頭冠の後方の包皮環状溝には多数の皮脂腺(Tyson腺)が開口し、恥垢(smegma)の産生に関与します(Parkash et al., 1973)。

3. 神経支配

亀頭冠は陰部神経(Pudendal nerve, S2-S4)の分枝である陰茎背神経(Dorsal nerve of penis)から豊富な感覚神経支配を受けます(Yucel and Baskin, 2004)。この部位には特にMeissner小体(低閾値機械受容体)、Pacini小体(振動受容体)、Ruffini終末(伸展受容体)、および自由神経終末が高密度に分布しており、触覚、圧覚、振動覚、温度覚に対して極めて高い感受性を示します(Halata and Munger, 1986; Yang et al., 2008)。神経終末の密度は亀頭尖端部よりも亀頭冠においてより高いことが報告されています(Sorrells et al., 2007)。

4. 血管系

亀頭冠周囲には内陰部動脈(Internal pudendal artery)の分枝である陰茎背動脈(Dorsal artery of penis)および亀頭動脈(Artery of glans)からの豊富な毛細血管網が存在します(Breza et al., 1989)。静脈系は陰茎背深静脈および浅静脈に流入します。この血管構造により、性的興奮時には一酸化窒素(NO)の作用により血管拡張が生じ、亀頭冠は充血して赤みを帯び、サイズがわずかに増大します(Lue, 2000)。

5. リンパ系

亀頭冠のリンパ流は主に浅鼠径リンパ節(Superficial inguinal lymph nodes)に向かい、一部は深鼠径リンパ節にも流入します(Pandey et al., 2007)。この解剖学的経路は、陰茎の感染症や悪性腫瘍の転移様式を理解する上で重要です。

臨床的意義

1. 性的機能における役割

亀頭冠は陰茎において最も感覚神経が密集した部位の一つであり、性的刺激に対して極めて高い感受性を示します(Sorrells et al., 2007)。性交時における機械的刺激は主にこの部位で受容され、性的興奮の誘発と維持、および射精反射の惹起に重要な役割を果たします(Komisaruk et al., 2010)。また、亀頭冠の形態は性交時の物理的刺激パターンに影響を与える可能性が示唆されています(Gallup et al., 2003)。

2. 包皮環状溝と衛生管理

包皮を持つ男性では、亀頭冠の後方に形成される包皮環状溝に皮脂腺(Tyson腺)からの分泌物、剥離上皮細胞、および細菌が混合した恥垢(smegma)が蓄積しやすくなります(Fleiss et al., 1998)。恥垢の蓄積は悪臭の原因となるだけでなく、亀頭包皮炎(Balanoposthitis)の発症リスクを高めます(Edwards, 1996)。そのため、包皮を後退させて亀頭冠周囲を温水で洗浄する適切な衛生管理が推奨されます(Camille et al., 2002)。ただし、過度の洗浄や石鹸の使用は粘膜の刺激となる可能性があるため注意が必要です(Krueger and Osborn, 1986)。

3. 性感染症の診察部位