
J0787 (男性の骨盤臓器の正中矢状断:左側からの右半分の図)

J0788 (陰茎、球海綿体筋および筋膜と皮膚の一部を除去:下方からの図)




陰茎亀頭は、尿道海綿体(corpus spongiosum)の末端部が膨大して形成された、円錐形または帽子状の構造物です (Standring, 2021)。陰茎体部の先端に位置し、正常な成人男性では直径約2.5〜3cm程度の大きさを持ちます (Moore et al., 2018)。亀頭の表面は平滑で、多数の小さな乳頭状隆起が存在し、特殊な感覚受容体が密集しています (Cold and Taylor, 1999)。
組織学的には、陰茎亀頭の外表面は重層扁平上皮で覆われており、ケラチン化はほとんど認められません (Fleischmann et al., 2012)。これにより高い感受性が維持されています。亀頭内部には豊富な血管網が存在し、勃起時には充血により膨隆します (Dean and Lue, 2005)。
解剖学的には、亀頭冠状溝(corona glandis)と呼ばれる溝によって陰茎体部と明確に区別されます (Moore et al., 2018)。この冠状溝は陰茎亀頭の基部を環状に取り囲み、陰茎体部との境界を形成しています (Standring, 2021)。
亀頭の基部にある冠状溝の部分には皮脂腺(亀頭腺/Tyson腺)が存在し、スメグマと呼ばれる分泌物を産生します (Parkash et al., 1973)。スメグマは皮脂と剥離した上皮細胞から構成される白色の分泌物で、適切な衛生管理が行われない場合には蓄積し、炎症や悪臭の原因となります (Wright, 1970)。
神経支配としては、陰茎背神経(陰部神経の枝)が豊富に分布しており、亀頭表面および冠状溝周囲に密な神経網を形成しています (Yang et al., 2008)。特にメイスナー小体やパチニ小体などの機械受容体、自由神経終末などの感覚受容体が多数存在します (Halata and Munger, 1986)。
これらの感覚受容体により、陰茎亀頭は触覚、圧覚、温度感覚などに高い感受性を示し、性的刺激を感知する主要な部位となっています (Rowland et al., 2010)。特に冠状溝付近は感覚受容体の密度が高く、最も感受性の高い領域とされています (Sorrells et al., 2007)。
臨床的には、包茎(phimosis)、亀頭包皮炎(balanoposthitis)、亀頭炎(balanitis)などの疾患が関連します (Edwards, 1996)。包茎は包皮が狭窄し、亀頭を露出できない状態を指し、小児期には生理的包茎として正常ですが、成人でも持続する場合は病的包茎とされます (Oster, 1968)。亀頭包皮炎は包皮と亀頭の炎症で、カンジダ感染や細菌感染が原因となることが多く、糖尿病患者で好発します (Lisboa et al., 2009)。
また、亀頭部は尿道口が開口する部位でもあり、尿道下裂(hypospadias)や尿道上裂(epispadias)などの先天異常が発生することもあります (Baskin et al., 2001)。尿道下裂は尿道口が陰茎腹側の異常な位置に開口する先天性疾患で、約300人に1人の頻度で発生します (Paulozzi et al., 1997)。
性感染症の好発部位でもあり、梅毒硬性下疳(syphilitic chancre)や尖圭コンジローマ(condyloma acuminatum)などが生じやすい部位です (Patel et al., 2014)。梅毒の初期病変である硬性下疳は、亀頭や冠状溝に好発する無痛性の潰瘍性病変です (Kent and Romanelli, 2008)。尖圭コンジローマはヒトパピローマウイルス(HPV)感染により生じる乳頭状の病変で、亀頭や冠状溝に多発します (Wiley et al., 2002)。
さらに、陰茎癌(penile cancer)の約95%は扁平上皮癌で、亀頭に好発します (Misra et al., 2004)。包茎、慢性炎症、ヒトパピローマウイルス感染などが危険因子とされています (Dillner et al., 2000)。