陰茎

陰茎は男性の性器であり、泌尿器の一部である尿道を含みます。陰茎の基部は陰茎根と呼ばれ、自由部は陰茎体、先端は陰茎亀頭、咽頭後縁の高まりは亀頭冠、そして後方の溝の部分は亀頭頚と呼ばれます。陰茎上面を陰茎背、下面は尿道が通過する側で尿道面と呼ばれます。 陰茎の主体は、尿道を包む尿道海綿体と、2つの陰茎海綿体です。左右の陰茎海綿体が接着してできる下面の溝に尿道海綿体がはまります。陰茎海綿体の恥骨下枝への付着部を陰茎脚、尿道海綿体の基部のふくらみを尿道球と呼びます。亀頭は尿道海綿体が先端でふくらんだものであり、各海綿体には結合組織性の強靭な陰茎・尿道海綿体小柱と呼ばれる平滑筋を含む柱が多数内腔を走っています。 陰茎海綿体洞には、深陰茎動脈などからの枝であるラセン動脈が直接流入します。血液が急速に流入すると、海綿体、海綿体静脈からの血流の還流が妨げられ、海綿体は腫脹して陰茎が膨起します。左右の陰茎海綿体の間の不完全な仕切りを陰茎中隔、亀頭内の正中にあるものを亀頭中隔と呼びます。三つの海綿体を深陰茎筋膜が共通に包み、さらにその外側を浅陰茎筋膜が包みます。 陰茎の皮膚はゆるく、前方では二重となってヒダをつくり、これを包皮と呼びます。包皮と亀頭下面を結ぶヒダを包皮小帯と呼びます。下面には陰嚢縫線につづく陰茎縫線が認められます。亀頭冠には包皮線があり、これは独立皮脂腺です。

日本人のからだ(村上 弦 2000)によると

陰茎の変異

陰茎欠損の報告は4例あり、矮小陰茎は性腺機能不全などと、巨大陰茎は性早熟症と共に観察されます。一般的に外尿道口は会陰部や肛門内に存在し、精巣、精管、精嚢、前立腺はほぼ正常に存在します。肛門近くには小さな皮弁状の構造(皮膚)が見られます(図142)(宮野ら、1982;市川ら、1986)。

重複陰茎の報告は4例あり、左右の陰茎は正中線で癒合し、1側の尿道はしばしば盲管で終わります。類似の形態として二分亀頭(重複亀頭)が存在します(Matsuzaka et al.、1994)。軽度の重複例としては副亀頭があり、正常亀頭面に亀頭類似の突出部が見られるというものもあります(結城ら、1974;Fujita et al.、1979;大塚ら、1985)。

陰茎の弯曲や捻転はしばしば観察される変異で、軽度の例では勃起時のみ確認できます(中島、1933;平田、1962;中島ら、1978)。

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図142 陰茎欠損の2例(市川ら, 1986)

図142 陰茎欠損の2例

A:尿道欠損の例、B:精管欠損と膀胱直腸瘻が存在する例