前立腺 Prostata

J0590 (男性右側の閉鎖動脈と下腹壁動脈:左側からの図)

J0593 (男性骨盤の動脈、左方からの図)

J0623 (男性骨盤の静脈、右半分、左方からの図)

J0771 (膀胱、拡張時の周囲構造付き:後方からの図)

J0774 (男性の膀胱、適度に拡張され開放された:前方からの図)

J0784 (前立腺と精嚢、精管:前上方からの図)

J0786 (左側の骨盤壁を除去した後の男性の骨盤臓器:左方からの図)

J0787 (男性の骨盤臓器の正中矢状断:左側からの右半分の図)

J0807 (恥骨前立腺靭帯:上後方からの図)

J0808 (男性骨盤:前面からの切断面)

J0979 (左側の交感神経の骨盤神経叢)
前立腺は、男性の生殖器系における必須の付属性腺器官です。解剖学的および臨床的観点から前立腺について詳細に説明します(McNeal, 1988):
1. 解剖学的特徴
- 位置:膀胱頸部と尿道膜様部の間に位置し、骨盤底の筋膜上に存在します(Standring, 2020)。恥骨結合の後方約2cm、直腸前壁から1.5cmの距離にあります。
- サイズ:成人男性では横径約4cm、前後径約2cm、上下径約3cmで、重量は通常20~25gです(Drake et al., 2019)。
- 構造:30~50個の複合管状胞状腺が線維筋性間質内に存在し、これらは15~30本の排出管を介して尿道前立腺部に開口しています(Moore et al., 2018)。
- 被膜:緻密な線維筋性被膜で覆われており、この被膜は手術時の剥離面となります(Walsh et al., 2012)。
- 区分:組織学的および臨床的に以下の領域に分けられます(McNeal, 1981)。
- 辺縁帯(Peripheral zone):前立腺全体の70%を占め、前立腺癌の好発部位です。
- 中心帯(Central zone):前立腺全体の25%を占め、精嚢管を含みます。
- 移行帯(Transition zone):前立腺全体の5%を占め、前立腺肥大症の発生部位です。
- 前線維筋性間質(Anterior fibromuscular stroma):前部の非腺性組織です。
- 血管支配:下膀胱動脈、内陰部動脈、閉鎖動脈からの枝により栄養され、前立腺静脈叢を介して内腸骨静脈に還流します(Polak and Horacek, 2015)。
- 神経支配:骨盤内臓神経叢(交感神経と副交感神経)からの枝を受け、これらは射精と分泌に関与します(Lepor et al., 2004)。
2. 臨床的意義
- 前立腺分泌液:精液の約30%を占め、PSA(前立腺特異抗原)、酸性ホスファターゼ、亜鉛、クエン酸などを含有します(Aumuller and Seitz, 1990)。
- 前立腺疾患:
- 前立腺肥大症(BPH):移行帯での非悪性増殖で、尿流障害の主要原因です(Roehrborn, 2011)。
- 前立腺癌:男性の悪性腫瘍として最も一般的で、主に辺縁帯に発生します(Siegel et al., 2021)。
- 前立腺炎:急性・慢性の炎症性疾患で、排尿障害や会陰部痛の原因となります(Krieger et al., 1999)。
- 診断と評価:
- 直腸診(DRE):前立腺の硬さ、大きさ、表面性状を評価する基本的手技です(Gosselaar et al., 2008)。
- PSA検査:前立腺癌のスクリーニングとして広く使用される血液検査です(Catalona et al., 1991)。
- 経直腸超音波検査(TRUS):前立腺の画像診断と生検のガイドとして使用されます(Halpern et al., 2002)。
- MRI:前立腺癌の病期診断や標的生検のために高い解像度で前立腺を評価します(Turkbey et al., 2019)。
3. 発生学と名称の由来
前立腺は発生学的には尿生殖洞の内胚葉由来で、胎生10週頃から発達します。その発達にはアンドロゲンが不可欠です(Cunha et al., 2004)。
- 「Prostata」はギリシャ語の「pro」(前に)と「histanai」(立つ)に由来し、「前に立つもの」を意味します(Skinner, 2016)。
- アレキサンドリア学派のエラシストラトス(紀元前304-250年頃)が初めて記述し、その位置から「prostates」と命名しました(Porter, 1997)。
- 日本語では当初「摂護腺」と呼ばれていましたが、現在は直訳的な「前立腺」が標準用語として使用されています(日本解剖学会, 2007)。