
J0777 (精巣鞘膜(臓側板)を開いた後の右の精巣と精巣上体:外側からの図)

J0778 (精巣鞘膜の壁側板を開いた後の右の精巣と精巣上体:内側からの図)


精巣上体頭は精巣上体の近位部を構成し、精巣上極に位置する直径約10mmの円錐形または半球形の構造である。主に10〜15本の精巣輸出管(ductuli efferentes testis)から成り、これらは精巣網から精巣上体管へと精子を輸送する役割を担う (Moore et al., 2018)。組織学的には、精巣輸出管は立方上皮または単層円柱上皮で内張りされており、上皮細胞には繊毛と微絨毛が混在する。繊毛の拍動は管腔内の精子の移動を促進し、微絨毛は吸収機能を担う (Ross and Pawlina, 2016)。精巣輸出管は精巣上体頭内で蛇行しながら合流し、最終的に単一の精巣上体管となる。
精巣上体頭は精子成熟過程において重要な役割を果たす。精巣で産生された未熟な精子は精巣輸出管を通過する際、管腔内での水分吸収により濃縮される。この過程で精子濃度は約5〜10倍に上昇し、精子の成熟に適した環境が形成される (Sullivan and Mieusset, 2016)。精巣上体頭の上皮細胞は活発な分泌・吸収活動を行い、精巣上体液の組成を調節する。特に、エピジディモソーム(epididymosomes)と呼ばれる小胞を介したタンパク質の輸送が精子膜の修飾に重要である (Cornwall, 2009)。また、グリコシダーゼ、プロテアーゼ、脂質転移タンパク質などの酵素が精子表面の糖タンパク質や脂質の再構成を促進し、精子の受精能獲得に寄与する (Cornwall, 2009)。
精巣上体頭の病変は男性不妊症の原因となりうる。急性精巣上体炎は細菌感染(特に大腸菌やクラミジア)により引き起こされ、精巣上体頭に好発する。慢性炎症は瘢痕形成と精路閉塞を招き、閉塞性無精子症の原因となる (Lotti and Maggi, 2015)。精巣上体嚢胞は精巣上体頭に最も多く発生し、多くは無症候性であるが、大きな嚢胞は不快感や疼痛を引き起こすことがある。精巣上体頭の先天的欠損や低形成は、先天性両側精管欠損症(CBAVD)と関連し、閉塞性無精子症を呈する (Jungwirth et al., 2018)。画像診断では、超音波検査が精巣上体頭の評価に有用であり、炎症、嚢胞、腫瘤の検出が可能である (Lotti and Maggi, 2015)。
精巣上体頭は東洋医学、特に鍼灸医学および漢方医学において、腎経絡系および肝経絡系と密接に関連する解剖学的構造として認識されている。
精巣上体頭の解剖学的位置は、足少陰腎経および足厥陰肝経の走行領域に相当する。特に、腎経の曲骨(CV2付近)、中極(CV3)、関元(CV4)といった下腹部・会陰部の経穴は、生殖器系全体と関連が深い(Deadman et al., 2007)。精巣上体頭を含む精巣・精巣上体領域は、腎経の「腎は精を蔵す」という理論において、精(生殖の本質)の貯蔵・成熟に関わる重要な部位とされる(Maciocia, 2015)。また、肝経は陰部を巡り、生殖器の気血調節に関与するため、精巣上体頭の機能障害は肝経の疏泄機能の失調と関連づけられることがある(Maciocia, 2015)。