卵巣上体 Epoophoron

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J0793 (子宮、卵管および卵巣:後方からの図)

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J0795 (腟、子宮、右の卵管と卵巣:後方から開いている図)

1. 解剖学的特徴

卵巣上体(epoophoron)は、女性の生殖器官の一部で、広間膜(卵巣間膜、mesosalpinx)内の外側部分に位置する痕跡的細管の集合体です(Moore et al., 2018; Standring, 2020)。解剖学的には、卵管(uterine tube)と卵巣(ovary)の間、卵巣門(hilum of ovary)の近くに存在します。この構造は、10〜15本の横走小管(transverse tubules)からなり、それらは縦走する集合管(longitudinal duct)、いわゆるガルトナー管(Gartner's duct)に収束しています(Standring, 2020)。各小管は直径約1〜2mmで、卵巣門から卵管に向かって放射状に配列しています。

2. 発生学的意義

発生学的には、胎児期の中腎(mesonephros、ヴォルフ体Wolffian body)の頭側部分の遺残物で、男性の精巣上体(epididymis)に相同する器官です(Sadler, 2019; Moore et al., 2018)。胎生期において、中腎小管(mesonephric tubules)の一部が退化せずに残存したものが卵巣上体となります。女性では、ミュラー管(Müllerian duct)が発達して卵管、子宮、腟の上部を形成する一方、ウォルフ管(Wolffian duct)系は大部分が退化し、卵巣上体はその痕跡として残ります。機能的意義はほとんどないとされる痕跡器官ですが、時に卵巣上体嚢胞(epoophoron cyst)を形成することがあります(Kurman et al., 2020)。

3. 臨床的意義

臨床的には、卵巣上体由来の嚢胞(卵巣傍嚢胞、paraovarian cyst)が発生することがあり、これは広間膜嚢胞(mesosalpinx cyst)の一種として分類されます(Kurman et al., 2020; Hoffman et al., 2016)。これらの嚢胞は通常単房性で、透明な漿液性内容物を含み、直径は数mmから10cm以上に及ぶこともあります。通常は無症状で偶発的に発見されますが、大きくなると圧迫症状(腹部膨満感、下腹部痛、頻尿など)を引き起こすことがあります。また、まれに茎捻転(torsion)を起こし、急性腹症の原因となることもあります(Hoffman et al., 2016)。さらに、極めてまれですが、卵巣上体由来の腺腫(adenoma)や悪性腫瘍(carcinoma)が報告されています(Kurman et al., 2020)。診断には経腟超音波検査(transvaginal ultrasonography)やMRI(magnetic resonance imaging)が用いられ、卵巣嚢腫との鑑別が重要です。治療は、症状がある場合や悪性が疑われる場合に手術的摘出(surgical excision)が基本となり、腹腔鏡下手術(laparoscopic surgery)が第一選択となります(Hoffman et al., 2016)。

4. 組織学的特徴

組織学的には、卵巣上体の管は単層立方上皮(simple cuboidal epithelium)または低円柱上皮(low columnar epithelium)で裏打ちされ、時に繊毛(cilia)を持つこともあります(Ross and Pawlina, 2016)。これは発生学的起源である中腎管の上皮特性を反映しています。上皮細胞の核は円形から楕円形で、細胞質は淡明です。管の周囲には薄い結合組織層が存在し、平滑筋成分はほとんど含まれません。この組織学的特徴は、豊富な平滑筋層を持つ卵管との鑑別点となります(Ross and Pawlina, 2016)。

参考文献

東洋医学(鍼灸・漢方)との関連性