腟は女性の性器であり、産道の下部をなし、月経による出血物を排出する経路として機能します。上部は子宮口を介して子宮腔に、下部は腟前庭で外部に開口します。腟口を部分的に覆う粘膜の襞を処女膜と呼び、その痕跡を処女膜痕といいます。子宮頚部が腟後壁の方に向いているため、後壁は長く(7cm以上)、前腟はやや短い(6cm)です。子宮頚部と腟壁の間には、腟部を輪状に取り巻く陥凹を腟円蓋と呼びます。腟壁には横皺が多数存在し、腟粘膜皺と呼ばれます。前壁および後壁には縦の隆起があり、前皺柱および後皺柱と呼ばれます。前皺柱の下部は、腟の尿道隆起に連続する尿道によって形成されます。粘膜上皮は重層扁平上皮であり、筋層は平滑筋で構成されています。腟の刺激によって性的興奮が引き起こされ、特に絶頂反応(オルガスム)が生じるメカニズムについては、現在ほとんど分かっていません。産婦人科医によると、腟口の一部を除いて、腟は機械的な刺激に鈍感であるようです。メスで切っても鉗子で引っ張っても、痛みを訴える患者はいません。組織学的にも、腟壁には知覚神経が豊富に分布している様子は見られず、終末器官のようなものは全く存在しません。では、性交による腟の快感はどこから来るのでしょうか?最近の研究によると、その答えは、腟の前方に走る尿道にある可能性があります。免疫組織化学の発展により、尿道の固有層および上皮層の中に、知覚神経(Substance PおよびCGRPなど、知覚神経に特有の伝達物質を含む)が、非常に密な網を作ることが分かってきました。さらに、上皮層中には、アミンであるセロトニン(5HT)を分泌する、神経細胞に似た正常な細胞(パラニューロン)が多数分布しています。このパラニューロンは、上皮層内に樹状突起を伸ばしており、分布と形態から、圧迫や引き伸ばし等の機械的な刺激を受ける機械受容器と推定されています。