肺胸膜 Pleura pulmonalis

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J0760 (胸骨を通る水平断面:上方からの図)

肺胸膜(臓側胸膜)Pleura pulmonalis

解剖学的特徴

肺胸膜(pleura visceralis, pulmonary pleura)は、肺実質を直接覆う薄い漿膜性の膜である。その厚さは約0.1〜0.2mmで、透明な結合組織から構成される。組織学的には、単層扁平上皮(中皮細胞、mesothelial cells)と薄い弾性線維を含む結合組織層から成り立っている(Gray and Williams, 2021; Standring, 2020)。肺胸膜は肺表面全体を完全に被覆し、肺葉間裂(interlobar fissures)に沿って肺葉間にも陥入して葉間面も被覆する。

位置関係と連続性

解剖学的に、肺胸膜は肺門部(hilum of lung)において肺に出入りする気管支、肺動静脈、リンパ管などの構造物(肺根、pulmonary root)を包み込み、そこで壁側胸膜(pleura parietalis)と連続する(Moore et al., 2023)。両胸膜の間には胸膜腔(pleural cavity)が存在し、その間隙は毛細血管一層分程度である。胸膜腔内には少量の漿液性の胸水(pleural fluid)約5〜15mlが含まれており、この液体は表面張力を低下させ、呼吸時の肺の拡張と収縮をスムーズにする潤滑剤として機能する。

神経支配と感覚

肺胸膜は豊富な知覚神経支配を受けている。炎症(胸膜炎、pleuritis)が生じた場合には鋭い胸痛(pleuritic pain)を引き起こし、特に呼吸時に痛みが増強する特徴がある(Kumar and Abbas, 2022)。

臨床的意義

肺胸膜は胸膜中皮腫(malignant mesothelioma)の発生部位となることがあり、アスベスト(石綿)曝露との関連が知られている(Carbone et al., 2019)。また、胸水貯留(pleural effusion)、気胸(pneumothorax)、血胸(hemothorax)などの病態も肺胸膜と密接に関連している。

診断には胸部X線検査、CT検査、超音波検査、胸腔鏡検査(thoracoscopy)などが用いられる。治療法としては、胸腔ドレナージ(thoracic drainage)や胸膜癒着術(pleurodesis)が適応されることがある。

参考文献