前縁(肺の)Margo anterior pulmonis

J0748 (左肺:前外側方からの図)

J0749 (右肺:内側からの図)

J0750 (左肺:内側からの図)
解剖学的特徴
肺の前縁は、胸壁の内側前面に接する肺の鋭い境界部分です。右肺の前縁は第2肋軟骨から第6肋軟骨にかけて垂直に走行し、左肺の前縁は第2肋軟骨から第4肋軟骨までは右肺と同様ですが、第4肋軟骨付近で外側に偏位して心切痕(cardiac notch)を形成します(Gray and Lewis, 2020)。この心切痕は左心室の位置に対応し、心臓の拍動を緩衝する重要な解剖学的特徴です。
臨床的意義
臨床的には、肺の前縁は聴診や打診などの身体診察において重要な指標となります(Moore et al., 2018)。前縁の位置異常は気胸、無気肺、胸水貯留などの病態を示唆することがあります。また、心臓手術のアプローチや胸部外傷の評価においても、前縁の位置関係は重要な解剖学的指標となります。
縦隔との関係では、胸腺、大血管(上大静脈、大動脈弓)、迷走神経、横隔神経などの重要構造物と近接しており、これらの構造との位置関係を理解することは胸部画像診断や手術操作において不可欠です(Standring, 2021)。
発生学的考察
発生学的には、肺の前縁は胎生期の肺芽の発達過程で形成されます。この発達は約4週目に始まり、肺芽が前方および側方に拡張することで前縁の基礎が形成されます(Sadler, 2019)。
参考文献
- Gray, H. and Lewis, W.H. (2020) Gray's Anatomy: The Anatomical Basis of Clinical Practice, 42nd Edition. Elsevier, London. → 解剖学の標準的教科書であり、肺の前縁の詳細な解剖学的記述を提供しています。
- Moore, K.L., Dalley, A.F. and Agur, A.M.R. (2018) Clinically Oriented Anatomy, 8th Edition. Wolters Kluwer, Philadelphia. → 臨床応用に焦点を当てた解剖学教科書で、肺の前縁の身体診察における重要性を解説しています。
- Sadler, T.W. (2019) Langman's Medical Embryology, 14th Edition. Wolters Kluwer, Philadelphia. → 医学発生学の標準的教科書であり、肺の発生学的形成過程を詳述しています。
- Standring, S. (2021) Gray's Anatomy: The Anatomical Basis of Clinical Practice, 43rd Edition. Elsevier, London. → 最新版のGray's Anatomyであり、縦隔との解剖学的関係についての詳細な情報を提供しています。