肋骨面(肺の)Facies costalis pulmonis

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J0747 (右肺:前外側方からの図)

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J0748 (左肺:前外側方からの図)

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J0749 (右肺:内側からの図)

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J0750 (左肺:内側からの図)

定義と解剖学的特徴

肺の肋骨面(facies costalis pulmonis)は、胸郭の内面に隣接する肺の外側表面を指し、肺の表面積の大部分を占める重要な解剖学的領域である(Standring, 2020)。この表面は滑らかな凸面を呈し、肋骨、肋軟骨、肋間筋に密接に接している(Drake et al., 2024)。肋骨面には肋骨の圧痕によって形成された浅い肋骨溝(sulci costales)が観察され、これらは肋骨の走行に対応している(Moore et al., 2022)。

肋骨面は壁側胸膜(pleura parietalis)の肋骨部(pars costalis)によって覆われており、臓側胸膜(pleura visceralis)との間に胸膜腔(cavitas pleuralis)を形成している(Netter, 2023)。この胸膜腔内には少量の漿液が存在し、呼吸運動時の摩擦を軽減する役割を果たしている(Hansen and Lambert, 2021)。

構造的特徴と葉区分

右肺の肋骨面は上葉(lobus superior)、中葉(lobus medius)、下葉(lobus inferior)の3つの葉に区分され、各葉は葉間裂(fissurae interlobares)によって境界づけられている(Moore et al., 2022)。具体的には、斜裂(fissura obliqua)が上葉と下葉を分離し、水平裂(fissura horizontalis)が上葉と中葉を分離している(Standring, 2020)。

左肺の肋骨面は上葉と下葉の2つの葉のみで構成され、斜裂によって区分されている(Drake et al., 2024)。左肺は心臓の存在により右肺よりも容積が小さく、上葉の前下部には心切痕(incisura cardiaca)が認められる(Netter, 2023)。

肋骨面の深部には肺実質が存在し、これは弾性結合組織の支持組織内に気管支樹と肺胞が分布する構造からなる(Hansen and Lambert, 2021)。肺実質は豊富な血管網を有し、肺動脈と肺静脈による二重の血液供給を受けている(West, 2021)。

臨床的意義

肋骨面は臨床診断において極めて重要な部位である。聴診(auscultation)では、気管支呼吸音や異常呼吸音(ラ音、摩擦音など)の評価が行われ、肺炎(pneumonia)、気管支炎(bronchitis)、胸膜炎(pleuritis)などの診断に寄与する(Bickley, 2020)。打診(percussion)では、正常な共鳴音(resonance)の減弱や消失が胸水(pleural effusion)や肺実質の浸潤を示唆し、逆に過共鳴(hyperresonance)は気胸(pneumothorax)や肺気腫(emphysema)を示唆する(Talley and O'Connor, 2023)。

画像診断においては、胸部X線写真やCT検査で肋骨面の異常陰影が肺結節(pulmonary nodule)、肺癌(lung cancer)、肺炎、無気肺(atelectasis)などの病変を示すことがある(Webb et al., 2022)。特に胸膜直下の病変は肋骨面に接して観察されることが多く、診断上の重要な所見となる(Hansell et al., 2022)。

外科的には、肋骨面は開胸手術(thoracotomy)や胸腔鏡手術(video-assisted thoracoscopic surgery: VATS)における重要な解剖学的ランドマークである(Sugarbaker et al., 2020)。肋間開胸アプローチでは、肋骨面への到達経路の選択が手術視野と合併症リスクに影響する(Kaiser and Jaklitsch, 2021)。肋骨面の損傷は医原性気胸を引き起こす可能性があり、胸腔ドレナージの挿入時にも肋骨面の解剖学的理解が不可欠である(Havelock et al., 2020)。

胸部外傷(thoracic trauma)においては、肋骨骨折に伴う肋骨面の穿通性損傷が外傷性気胸や血胸(hemothorax)の主要な原因となる(American College of Surgeons, 2022)。フレイルチェスト(flail chest)では、肋骨面の運動異常が換気障害を引き起こす重要な病態である(Kasper et al., 2024)。

参考文献