輪状靱帯(気管の)Ligamenta anularia tracheales

解剖学的構造

気管の輪状靱帯は、C字型の硝子軟骨(軟骨輪)とそれらを連結する線維弾性組織からなる構造で、気管の前壁と側壁を補強しています(Gray et al., 2020)。成人では通常16〜20個の軟骨輪が存在し、各軟骨輪は約4mmの高さで、互いに2〜3mmの間隔で配列しています。

機能的特徴

解剖学的特徴として、C字型の開口部は後方に位置し、気管膜様部(膜性壁)を形成しています(Standring, 2021)。この構造により気管は柔軟性と強度を兼ね備え、呼吸時の圧力変化に対応することができます。また、隣接する軟骨輪同士は弾性線維を含む結合組織(輪間結合)で連結されており、頸部の伸展や屈曲時にも気道の開存性を維持します。

臨床的意義

臨床的意義としては、気管切開術の際に第2〜3軟骨輪の位置が重要な指標となります(Grillo, 2018)。また、気管軟化症や気管軟骨輪の先天的欠損、長期挿管による軟骨輪の損傷などの病態では、気道の維持が困難になることがあります。気管支鏡検査では、これらの軟骨輪の状態を直接観察することが可能です(Murgu and Colt, 2019)。

参考文献

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J0737 (喉頭とその靭帯:右側からの図)

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J0762 (甲状腺、喉頭と気管に対する位置:前方からの図)