前庭靱帯(室靱帯) Ligamentum vestibulare

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J0737 (喉頭とその靭帯:右側からの図)

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J0746 (喉頭の前部を通る前向きの切断図)

解剖学的構造

前庭靱帯(Ligamentum vestibulare)は、喉頭内部に位置する粘膜ヒダの一つで, 上皮下の弾性線維からなる薄い膜状構造を呈する。この靱帯は、甲状軟骨の内側面(後面正中部)から披裂軟骨の声帯突起へと伸びており, 偽声帯(室ヒダ、false vocal cord)の骨格を形成する。また、喉頭室(laryngeal ventricle)の上壁を構成する重要な解剖学的構造物である。

組織学的には、疎性結合組織と弾性繊維で構成されており, 粘膜上皮の支持組織として機能する。下方に位置する声帯靱帯との間には喉頭室(モルガニ洞、Morgagni's ventricle)を形成する。

室靱帯(Ligamentum ventriculare)は前庭靱帯の同義語であり, 四角膜(quadrangular membrane)の下端が肥厚したもので、構造を補強する役割を担う。甲状軟骨の後面正中部と披裂軟骨小丘付近を結び, 偽声帯の支持組織として機能するとともに, 喉頭の保護機能に寄与している。

臨床的意義

前庭靱帯は臨床的に重要な構造物である。炎症や浮腫が生じると、喉頭蓋炎や喉頭浮腫の一部として現れることがあり, 上気道閉塞の原因となりうる。また、声帯ポリープや声帯結節などの病変が及ぶこともある。さらに、声門上がん(supraglottic cancer)の浸潤により嗄声や呼吸困難を引き起こすことがある。

参考文献