小角軟骨 Cartilago corniculata

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J0733 (右の披裂軟骨:前外側方からの図)

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J0734 (右の披裂軟骨:後内側方からの図)

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J0736 (喉頭とその靭帯:後方からの図)

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J0739 (内側の喉頭筋:右側からの図)

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J0740 (喉頭筋:後方からの図)

1. 定義と基本的特徴

小角軟骨(Cartilago corniculata、サントリニ軟骨)は、披裂軟骨尖の上部に位置する小さな円錐状の弾性軟骨です。この軟骨は長さ約2〜3mm、幅約1〜2mmの微小な構造物であり、披裂軟骨と直接結合している場合と靭帯を介して連結している場合があります。組織学的には弾性軟骨から構成され、加齢に伴い石灰化や骨化が進行することが知られています。小角軟骨は小角結節(tuberculum corniculatum)を形成し、喉頭後壁の重要な解剖学的ランドマークとなっています。

2. 解剖学的位置関係と周辺構造

小角軟骨は披裂軟骨の頂点に位置し、その後方には喉頭蓋谷(vallecula epiglottica)が存在します。外側方向には披裂喉頭蓋ヒダ(plica aryepiglottica)が付着し、内側面は咽頭後壁に接しています。また、小角軟骨と楔状軟骨(cartilago cuneiformis)の間には小角楔状靭帯が走行し、両軟骨を連結しています。この位置関係は、喉頭の三次元的構造を理解する上で重要な解剖学的指標となります。

3. 機能的意義

小角軟骨は嚥下時の喉頭閉鎖機構において重要な役割を担っています。嚥下の咽頭期において、喉頭が挙上し前方に移動する際、小角軟骨は披裂喉頭蓋ヒダの緊張を介して喉頭入口部の閉鎖に貢献します。また、発声時には間接的に声帯の緊張調節に関与し、特に高音域の発声において披裂軟骨の位置調整を補助します。さらに、この構造は喉頭の防御機能において重要な役割を果たし、誤嚥防止メカニズムの一部として機能しています。

4. 臨床的意義

臨床的観点から、小角軟骨は以下のような重要性を持ちます。

内視鏡検査における指標:喉頭内視鏡検査時に小角軟骨は重要な解剖学的ランドマークとなり、披裂軟骨の同定や喉頭後壁の評価に役立ちます。

喉頭癌の評価:喉頭癌、特に声門上癌の進展範囲の評価において、小角軟骨への浸潤の有無は治療方針決定に重要な情報となります。喉頭手術における術前評価でも、この構造物の詳細な把握が必要とされます。

病的状態:小角軟骨周囲に生じる炎症性変化や外傷は、嚥下困難(dysphagia)や発声障害(dysphonia)の原因となることがあります。特に、披裂軟骨炎や喉頭外傷後の瘢痕形成は、小角軟骨の可動性を制限し、機能障害をもたらす可能性があります。

5. 発生学的背景

発生学的には、小角軟骨は第4咽頭弓由来の軟骨組織から分化・形成されます。胎生期における喉頭軟骨の発達過程において、他の喉頭軟骨とともに形成され、出生後も形態的変化を続けます。この発生学的知識は、喉頭の先天性奇形や発達異常を理解する上で重要です。

参考文献