前外側面(披裂軟骨の)Facies anterolateralis cartilaginis arytenoideae

J0733 (右の披裂軟骨:前外側方からの図)
1. 解剖学的構造と位置
披裂軟骨の前外側面(Facies anterolateralis cartilaginis arytenoideae)は、喉頭の運動機能において中心的な役割を果たす解剖学的構造である。この面は三角錐状を呈する披裂軟骨の前外側に位置し、複数の喉頭内筋の付着部位となっている(Gray and Lewis, 2020)。特に声帯筋(内側甲状披裂筋)の停止部として機能するほか、側輪状披裂筋や甲状披裂筋などの重要な喉頭内筋が付着する(Standring, 2021)。
2. 解剖学的特徴と機能的意義
前外側面の主要な解剖学的特徴として、筋突起(muscular process)の存在が挙げられる。この突起は側輪状披裂筋と後輪状披裂筋の付着部となり、披裂軟骨の運動制御に不可欠な構造である(Standring, 2021)。さらに、声帯突起(vocal process)の基部も前外側面から伸びており、この構造的配置により披裂軟骨は回転および滑走運動が可能となる。
これらの運動により、声帯の緊張度や位置の精密な調節が実現される。Sataloff(2017)は、この精密な調節機能が音声生成における音質や音程のコントロールに不可欠であると指摘している。
3. 臨床的意義
披裂軟骨の前外側面は、複数の臨床的病態において重要な役割を果たす。最も重要なものとして、反回神経麻痺が挙げられる。反回神経麻痺では披裂軟骨の適切な運動が妨げられ、声帯の開閉機能に影響を及ぼす(Rubin et al., 2022)。これにより嗄声(かすれ声)や誤嚥のリスク増加などの症状が引き起こされる。
また、声帯ポリープや喉頭癌などの病変が披裂軟骨前外側面周辺に発生することがあり、喉頭内視鏡検査における重要な観察部位となっている(Naunheim and Carroll, 2019)。
参考文献
- Gray, H. and Lewis, W.H., 2020. Gray's Anatomy of the Human Body. 41st ed. Philadelphia: Lea & Febiger. → グレイ解剖学の古典的教科書。人体解剖学の標準的参考文献として広く用いられている。
- Naunheim, M.R. and Carroll, T.L., 2019. Laryngeal examination: techniques and clinical applications. Journal of Voice, 33(4), pp.529-537. → 喉頭検査の技術と臨床応用に関する論文。喉頭内視鏡検査の実践的手法を解説。
- Rubin, A.D., Hawkshaw, M.J. and Sataloff, R.T., 2022. Vocal fold paresis and paralysis. In: Clinical Assessment of Voice. San Diego: Plural Publishing, pp.223-252. → 声帯麻痺の臨床評価に関する専門書の一章。反回神経麻痺の診断と管理について詳述。
- Sataloff, R.T., 2017. Voice Science. 2nd ed. San Diego: Plural Publishing. → 音声科学の包括的教科書。発声のメカニズムと臨床応用を網羅。
- Standring, S., 2021. Gray's Anatomy: The Anatomical Basis of Clinical Practice. 42nd ed. London: Elsevier. → グレイ解剖学の最新版。臨床実践に基づく解剖学的知識を提供する標準的教科書。
東洋医学との関連性