上角(甲状軟骨の)Cornu superius (Cartilago thyroidea)

J0683 (頭蓋骨の筋:後方からの図)

J0729 (甲状軟骨と輪状軟骨:右方からの図)

J0730 (甲状軟骨と輪状軟骨:前方からの図)

J0736 (喉頭とその靭帯:後方からの図)

J0738 (喉頭筋:右側からの図)

J0740 (喉頭筋:後方からの図)
1. 解剖学的特徴
- 甲状軟骨の上後方から上方に突出する細長い突起で、長さは約15〜20mm、先端は円錐状で後上方に向かう (Standring, 2020; Moore et al., 2018)
- 左右の上角は甲状軟骨板の後縁から連続し、甲状軟骨の最も突出した部位を形成する (Netter, 2019)
- 軟骨組織は弾性軟骨ではなく硝子軟骨で構成され、加齢とともに石灰化や骨化が進行することがある (Gray and Lewis, 2021)
- 上角の長さと形状には個体差があり、性差や年齢差が認められる (Kang et al., 2020)
2. 解剖学的関係
- 甲状舌骨靱帯(甲状舌骨膜の一部)が上角の先端と舌骨大角を連結し、喉頭の懸垂機構を形成する (Standring, 2020)
- 茎突舌骨筋と顎二腹筋後腹に囲まれた隙間(Beclard's triangle)の中に位置し、この三角は外科的アプローチの重要な指標となる (Testut and Latarjet, 2019)
- 近傍には頸動脈三角があり、総頸動脈、内頸静脈、外頸動脈などの重要な血管構造が走行する (Moore et al., 2018)
- 舌下神経(CN XII)や上喉頭神経(特に内枝と外枝)もこの領域を通過し、上喉頭神経外枝は輪状甲状筋を支配する (Netter, 2019; Friedman et al., 2019)
- 上喉頭動脈と上喉頭静脈が上角の内側を走行し、喉頭粘膜への血液供給を担う (Standring, 2020)
3. 臨床的意義
- 頸部外傷や喉頭骨折の一部として上角骨折が生じることがあり、嗄声、嚥下障害、気道狭窄などの症状を引き起こす可能性がある (Pearce and Wallis, 2022)
- 喉頭手術(喉頭微細手術、喉頭摘出術)や気管切開術の際の重要な解剖学的指標であり、術野の展開や器具の配置に影響を与える (Randolph, 2020)
- 異常に長い上角(elongated superior cornu)は、Eagle症候群類似の症状(嚥下時痛、咽頭異物感、頸部痛)の原因となることがあり、CT画像で診断される (Mortellaro et al., 2021)
- 甲状腺手術の際に上角近傍の上喉頭神経外枝が損傷されると、輪状甲状筋の麻痺を引き起こし、声の高さ調節障害や音域の低下をきたす可能性がある (Friedman et al., 2019)
- 上角の石灰化や骨化は画像診断(X線、CT)で容易に確認でき、法医学的な年齢推定の指標として用いられることがある (Ekinci and Ilhan, 2022)
4. 発生学的特徴