鼻堤 Agger nasi

解剖学的特徴

鼻堤は、中鼻甲介の前端部の前方に位置する小さな隆起であり、系統発生学的には、かつて存在していた付加的な鼻甲介(第1鼻甲介)の痕跡として残されています(Stammberger and Kennedy, 1995)。解剖学的には、鼻骨の下端から下鼻甲介の前端までの外側鼻壁上にある粘膜の隆起として観察されます。

組織学的特徴

組織学的には、鼻堤は豊富な血管網を含む粘膜下組織で覆われており、しばしば含気化されて鼻堤蜂巣(agger nasi cell)を形成します(Kuhn, 1996)。これは前頭洞排泄路の一部となる前部篩骨蜂巣のうち最前方に位置するものです。

臨床的意義

臨床的意義として、鼻堤蜂巣の過度の含気化は前頭洞排泄路を狭窄させ、前頭洞炎や慢性副鼻腔炎の一因となり得ます(Bolger et al., 1991)。内視鏡下鼻副鼻腔手術(ESS)において、鼻堤は前頭洞へのアプローチの重要な解剖学的指標となります(Wormald, 2003)。また、アレルギー性鼻炎では鼻堤粘膜の肥厚が見られることもあり、鼻閉の原因となることがあります(Mladina et al., 2010)。

参考文献

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J1072 (鼻腔の右壁と粘膜:左側からの図)

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J1073 (中鼻甲介と下鼻甲介を除去した後の鼻腔の右壁と粘膜:左方からの図)