鼻尖 Apex nasi

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J0636 (口部とその周囲:正面からの図)

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J1071 (鼻中隔と粘膜:左方からの図)

解剖学的構造

鼻尖(びせん)は、鼻の先端または最高点を指し、解剖学的には鼻翼軟骨(alar cartilage)の内側脚(medial crus)が左右で結合して形成される部分です(Gray and Standring, 2016; Patel et al., 2018)。鼻尖は皮膚、皮下組織、筋肉、軟骨によって構成されています。鼻翼軟骨は大鼻翼軟骨(greater alar cartilage)とも呼ばれ、外側脚(lateral crus)と内側脚に分かれており、内側脚が正中で結合することで鼻尖の骨格を形成します(Daniel and Brenner, 2006)。

鼻尖の軟骨構造は、鼻の形態を決定する上で最も重要な要素です。内側脚の長さ、幅、角度、および左右の対称性が鼻尖の投影(projection)、回転(rotation)、定義(definition)を決定します(Toriumi, 2006)。また、鼻尖部には鼻尖下制筋(depressor septi nasi muscle)が付着しており、表情筋として鼻尖の動きに関与しています(Pessa et al., 1998)。

組織学的特徴

鼻尖部の皮膚は比較的厚く、皮脂腺が豊富で、特に思春期以降は皮脂の分泌が活発になります(Rohrich and Ahmad, 2011)。組織学的には、鼻尖部の皮膚は顔面の他の部位と比較して、表皮が厚く、真皮内の皮脂腺の密度が高いという特徴があります(Letourneau et al., 1990)。また、鼻尖の形状は人種や個人差が大きく、軟骨の形状と厚さ、皮下組織の量によって決定されます(Daniel and Brenner, 2006)。

皮下組織層は線維脂肪組織からなり、その厚さは個人差が大きく、鼻形成術における手術計画に重要な影響を与えます(Oneal and Beil, 2010)。皮膚が厚い場合、軟骨の精密な形態変化が外観に反映されにくく、逆に皮膚が薄い場合は軟骨の不整が目立ちやすくなります(Rohrich and Ahmad, 2011)。

臨床的意義

臨床的には、鼻尖は美容外科での鼻形成術(rhinoplasty)の重要なポイントとなります(Patel et al., 2018; Toriumi, 2006)。鼻尖形成術では、軟骨の切除、縫合、移植などの技法を用いて、鼻尖の投影、回転、幅、対称性を調整します(Rohrich and Ahmad, 2011)。特に、suture techniques(縫合技術)は軟骨の形態を変化させる低侵襲な方法として広く用いられています(Tebbetts, 2003)。

また、鼻尖部の皮膚は炎症性疾患(酒さ、ざ瘡など)の好発部位でもあります(Wilkin et al., 2002)。これは皮脂腺の密度が高いことと、血管分布が豊富であることに関連しています。外傷時には鼻翼軟骨の損傷により鼻尖の変形をきたすことがあり、適切な整復が必要となります(Rohrich et al., 2004)。鼻尖軟骨の骨折や脱臼は、早期に診断・治療されないと永続的な変形を残す可能性があります。

美容的側面

鼻尖は顔の中央に位置し、顔の美的バランスにおいて重要な役割を果たしています(Toriumi, 2006; Gunter et al., 2002)。理想的な鼻尖の位置と形状は、人種や文化によって異なりますが、一般的に顔の調和を保つ上で重要な指標とされています。

西洋の美的基準では、鼻尖の投影は鼻根点(nasion)から鼻翼基部までの距離の約60-67%とされ、鼻唇角(nasolabial angle)は女性で95-110度、男性で90-95度が理想的とされています(Powell and Humphreys, 1984)。一方、東洋人では鼻尖の投影が低く、鼻唇角が大きい傾向があり、美的理想も異なります(Daniel and Palhazi, 2004)。鼻尖の定義(tip defining points)の明瞭さも重要な美的要素であり、適切な光と影のバランスが美しい鼻尖を形成します(Toriumi, 2006)。

参考文献