粘膜ヒダ(胆嚢の)Plicae mucosae vesicae biliaris

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J0711 (胆嚢と胆道:切断面)

1. 解剖学的特徴

胆嚢の粘膜ヒダ(Plicae mucosae vesicae biliaris)は、内腔へ突出する粘膜構造であり、多数の小房を持つレリーフ状(蜂巣状)の形態を呈しています。この構造は単層円柱上皮で覆われ、上皮下には結合組織と平滑筋線維が存在します。胆嚢の収縮時にはヒダが伸展して平坦化し、胆汁貯蔵容量の増加に寄与します。また、ヒダによる表面積の拡大は胆汁の濃縮・吸収機能を向上させる役割を果たしています。

2. 発生学的背景

粘膜ヒダは胎生期の内胚葉由来の上皮が増殖・分化する過程で形成されます。胎児期には比較的平滑な粘膜面を呈しますが、出生後に次第に複雑なヒダ構造へと発達します。この発達過程は生後1年間で急速に進行し、5歳頃までに成人とほぼ同様の構造が完成します。

3. 組織学的構造

粘膜ヒダの上皮細胞は、アポクリン様分泌能を持つ単層円柱上皮で構成されています。電子顕微鏡観察では、微絨毛と豊富なミトコンドリアを有し、活発な物質輸送能を示します。上皮下層は疎性結合組織で構成され、豊富な毛細血管網と少数のリンパ管が分布しています。

4. 臨床的意義

胆石症や胆嚢炎において、粘膜ヒダは炎症により肥厚し、慢性炎症では線維化が進行します。超音波検査では、正常な粘膜ヒダは「Mercedes-Benz sign」と呼ばれる特徴的な三叉星状のエコー像として観察されることがあります。コレステロールポリープなどの良性腫瘍や、稀に胆嚢癌がこれらのヒダから発生することもあります。腹腔鏡下胆嚢摘出術の際には、これらの構造の理解が手術の安全性向上に重要です。

5. 画像診断における意義

超音波検査に加え、CT検査やMRI検査でも粘膜ヒダの評価が可能です。特にMRI-MRCP(磁気共鳴胆管膵管撮影)では、胆嚢収縮前後での粘膜ヒダの変化を詳細に観察できます。近年では内視鏡的超音波検査(EUS)により、粘膜ヒダの微細構造変化と病理学的所見との相関が報告されています。

参考文献