尾状突起(肝臓の尾状葉の)Processus caudatus lobi caudati hepatis

1. 解剖学的特徴

肝臓の尾状葉の尾状突起は、肝門の上方に位置し、尾状葉と右葉の間にある実質的な結合部分です。解剖学的には、この突起は下大静脈溝と門脈の間に位置し、肝臓の背側面から下面に延びています(Abdel-Misih and Bloomston, 2010)。幅は約1.5〜2.5cmで、長さは個人差がありますが、通常3〜5cmほどです。

2. 組織学的特徴

組織学的には、他の肝実質と同様に肝細胞が六角形の小葉を形成し、門脈、肝動脈、胆管からなる門脈域(グリソン鞘)によって区切られています(Kogure et al., 2000)。尾状突起は独自の血管支配を持ち、門脈からは直接分枝を受け、静脈還流は主に下大静脈に直接流入する短肝静脈によって行われます。

3. 臨床的意義

臨床的意義として、尾状突起は肝臓手術において重要な解剖学的指標となります。特に肝右葉切除や拡大肝右葉切除時には尾状突起の処理が必要になることがあります(Kumon, 2017)。また、尾状葉は肝硬変時にも比較的保たれやすい部位であり、門脈圧亢進症では側副血行路の一部として機能することがあります(Philips et al., 2015)。肝細胞癌や転移性肝腫瘍が尾状突起に発生した場合、その特殊な血行動態から手術的アプローチが複雑になることもあります。

4. 参考文献

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J0710 (腹膜の折り返し部分と肝臓:下後方からの図)