外側舌喉頭蓋ヒダ Plica glossoepiglottica lateralis

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J0659 (舌:上方からの図)

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J0743 (喉頭口と喉頭腔:上方からの図)

外側舌喉頭蓋ヒダとは、舌根と喉頭蓋の間にある一対の外側の粘膜ヒダのことです。これらのヒダは正中舌喉頭蓋ヒダ(plica glossoepiglottica mediana)の外側に位置し、舌根部から喉頭蓋の側縁に向かって走行しています(Standring, 2021)。

解剖学的特徴

外側舌喉頭蓋ヒダは喉頭前庭の境界を形成し、これらのヒダと正中舌喉頭蓋ヒダの間に形成される陥凹を喉頭蓋谷(vallecula epiglottica)と呼びます(Moore et al., 2019)。この谷は左右一対存在し、食物の通過経路となります(Matsuo and Palmer, 2008)。組織学的には、粘膜下層に少量の弾性線維や結合組織を含み、表面は重層扁平上皮で覆われています(Netter, 2022; Ross and Pawlina, 2020)。

外側舌喉頭蓋ヒダの深層には、舌根部の筋組織と連続する線維が存在し、嚥下時の動的な動きを可能にしています(Drake et al., 2020)。血管供給は主に舌動脈の枝と上甲状腺動脈からなされ、静脈は舌静脈と咽頭静脈叢に注ぎます(Sinnatamby, 2019)。神経支配は舌咽神経(第IX脳神経)が担い、この領域の感覚と嚥下反射の伝達に重要な役割を果たします(Laitman and Reidenberg, 2013)。

臨床的意義

外側舌喉頭蓋ヒダは嚥下時に重要な役割を果たします。嚥下の際、舌根が後方に押し出されると、これらのヒダが喉頭蓋を上方に持ち上げ、喉頭入口を閉鎖するのを補助します。これにより食物が気管に入るのを防ぎます(Matsuo and Palmer, 2008; Logemann, 1998)。

臨床的には、外側舌喉頭蓋ヒダの炎症(喉頭蓋炎の一部として)や腫瘍、あるいは喉頭蓋谷に食物残渣が貯留することがあり、嚥下障害や誤嚥の原因となることがあります(Logemann, 2010; Ekberg et al., 2016)。また、気道確保のための気管挿管時には、喉頭鏡によりこれらのヒダと喉頭蓋谷が視認され、重要な解剖学的指標となります(Hagberg, 2018; Apfelbaum et al., 2022)。喉頭蓋谷は、麻酔導入時のマスク換気や気管挿管時の喉頭展開において、解剖学的ランドマークとして極めて重要です(Benumof and Hagberg, 2007)。

嚥下造影検査(videofluoroscopic swallowing study)では、喉頭蓋谷への造影剤の貯留パターンが嚥下障害の診断に用いられ、特に高齢者や神経疾患患者において臨床的意義が高いとされています(Clavé et al., 2006; Smithard, 2016)。

発生学的考察

外側舌喉頭蓋ヒダは、胎生期の第3・第4咽頭弓由来の組織から発生します(Sadler, 2023; Moore et al., 2020)。発生の過程で舌根部と喉頭蓋の間の組織が分化し、両側性の粘膜ヒダとして形成されます。第3咽頭弓からは舌根の後方1/3が形成され、第4咽頭弓からは喉頭軟骨の一部と喉頭蓋が形成されます(Schoenwolf et al., 2021)。これらの構造の融合と分化により、胎生8〜10週頃に外側舌喉頭蓋ヒダの原基が明確になります(Larsen, 2015)。

比較解剖学

哺乳類全般において外側舌喉頭蓋ヒダは認められますが、その発達度は種によって異なります(Hiiemae and Palmer, 2003)。ヒトでは比較的明瞭に発達しており、嚥下機能の精密な制御に寄与しています。特に二足歩行に伴う喉頭の下降により、ヒトでは喉頭蓋谷がより深く発達し、複雑な嚥下メカニズムを可能にしています(Laitman and Reidenberg, 2013; German et al., 2011)。

参考文献