長母趾屈筋の腱鞘 Vagina tendinum musculi flexoris hallucis longi

J0525 (右足の腱鞘は、脛骨側から赤い物質で注入された図)

J0526 (右足底の腱鞘は赤い物質で注入された図)
解剖学的概要
長母趾屈筋の腱鞘は、長母趾屈筋腱を包む滑膜性の鞘状構造であり、足関節から母趾末節骨まで延びる腱の滑走を助ける重要な解剖学的構造です(Standring, 2020)。
位置と走行
- 近位部:下伸筋支帯(inferior extensor retinaculum)の下方に始まり、距骨の後面を通過する(Moore et al., 2018)
- 中間部:踵骨の内側を通り、足底内側を走行し、載距突起の下方を通過する
- 遠位部:足底を斜めに横切り、母趾の基節骨から末節骨の基部まで延びる
- 全長は約10-12cmに及び、足部の腱鞘の中で最も長い(Netter, 2018)
解剖学的特徴
- 滑膜層:腱を直接覆う内層(臓側滑膜)と、周囲組織に接する外層(壁側滑膜)の二重構造(Standring, 2020)
- 滑液:腱鞘内には滑液が分泌され、腱の摩擦を軽減し円滑な滑走を可能にする
- 線維性腱鞘:特に指節部では滑膜性腱鞘の外側に強靭な線維性腱鞘が存在し、腱を骨に保持する
- 腱鞘交通:約20%の症例で、長母趾屈筋腱鞘と足関節の滑膜腔が交通している(Petersen et al., 2003)
機能
- 腱の保護:長母趾屈筋腱を機械的損傷や過度の摩擦から保護
- 滑走の円滑化:滑液により腱の滑走抵抗を最小化し、効率的な筋収縮を実現
- 栄養供給:滑液を介して腱への栄養供給を補助(Moore et al., 2018)
- 母趾屈曲運動:歩行時の蹴り出し動作や、つま先立ち時に重要な役割を果たす
臨床的意義