伏在裂孔の上角(Cornu superius)は、大腿筋膜の鎌状縁上部に位置する重要な解剖学的構造であり、大腿部前面の筋膜系において臨床的に重要な役割を果たしています(Standring, 2021; Moore et al., 2018)。



上角は鎌状縁(Margo falciformis)の上端部に位置し、内側へ向かって弧を描く線維性構造を形成します。この構造は伏在裂孔(Hiatus saphenus)の上外側境界を規定しており、鼡径靭帯(Ligamentum inguinale)の外側端から約4cm下方、恥骨結節(Tuberculum pubicum)の外側約3cmに位置します(Standring, 2021; Sinnatamby, 2011)。
上角の形態は個体差がありますが、一般的には長さ2-4cm、幅2-3mmの線維束として観察されます。この構造は大腿筋膜(Fascia lata)の深層から発生し、表層へ向かって斜走しながら鎌状縁を形成します(Agur and Dalley, 2017)。
上角は密性結合組織から構成され、主にI型コラーゲン線維が規則的に配列しています。この線維配列は引張応力に対する抵抗性を高めており、大腿筋膜の構造的完全性の維持に寄与しています(Ross and Pawlina, 2016)。電子顕微鏡観察では、線維芽細胞が豊富に認められ、細胞外基質の産生と維持に関与していることが示されています(Kierszenbaum and Tres, 2020)。
上角への血液供給は主に浅腸骨回旋動脈(A. circumflexa ilium superficialis)および浅腹壁動脈(A. epigastrica superficialis)の分枝から行われます(Drake et al., 2020)。静脈還流は同名の静脈を経て大伏在静脈系へ流入します。
神経支配に関しては、腸骨鼡径神経(N. ilioinguinalis)および大腿枝(Ramus femoralis)からの知覚線維が分布しており、この領域の痛覚伝達に関与しています(Skandalakis et al., 2020)。
上角は以下の重要な解剖学的構造と密接な位置関係にあります: