
J0175 (右上腕骨とその筋の起こる所と着く所:前方からの図)

J0176 (右上腕骨と筋の起こる所と着く所:後方からの図)






位置と配置
長掌筋は前腕前面の浅層に位置する筋で、橈側手根屈筋と尺側手根屈筋の間に配置されています (Gray, 2020)。この筋は前腕屈筋群の浅層を構成する5つの筋のうちの1つであり、最も表層に位置するため、皮膚表面から容易に触知することができます (Moore et al., 2018)。
筋の構造
長掌筋は非常に特徴的な形態を持ち、短い紡錘形の筋腹と長く細い腱から構成されています (Standring, 2016)。筋腹は前腕近位部に位置し、長さは約7-10cmで、前腕中央部で細長い腱に移行します。この腱は前腕遠位半分のほぼ全長にわたって走行し、手関節を越えて手掌に至ります (Cetin et al., 2013)。
起始
長掌筋は上腕骨の内側上顆から起始します。より詳細には、内側上顆の前面から起こる共同腱(総屈筋腱)の一部として起始し、この共同腱は前腕屈筋群の浅層筋に共通の起始部を提供しています (Gray, 2020)。また、内側上顆に隣接する筋間中隔および前腕筋膜からも一部線維が起始します (Moore et al., 2018)。
走行
筋腹は前腕近位部で橈側手根屈筋の内側(尺側)に位置し、正中神経と密接な関係を持ちながら遠位方向へ走行します。前腕中央部で腱に移行した後、この腱は橈側手根屈筋腱の内側を平行に下降し、手関節部では屈筋支帯(横手根靭帯)の表層(前面)を通過します (Standring, 2016)。手関節部では、長掌筋腱は皮下を走行するため、手関節を屈曲させることで皮膚表面から明瞭に観察できます (Sebastin et al., 2005)。
停止
長掌筋腱は手掌に入ると扇状に広がり、手掌腱膜(掌腱膜)に停止します。手掌腱膜は手掌中央部の皮下に存在する三角形の線維性構造で、長掌筋腱はこの腱膜の近位部を形成し、遠位方向へ放射状に線維を送ります (Gray, 2020)。一部の線維は屈筋支帯にも付着します (Moore et al., 2018)。
長掌筋は人体の筋の中で最も高頻度で変異や欠如が見られる筋の一つです (Reimann et al., 2004)。
筋の欠如
長掌筋は片側または両側で欠如することがあり、その頻度は人種や地域によって異なりますが、全体として約15-20%の人で片側または両側の欠如が報告されています (Sebastin et al., 2005)。欠如率は研究によって異なり、5.5%から63.9%まで幅広く報告されていますが、多くの研究では15-20%の範囲に収まっています (Cetin et al., 2013)。
形態的変異
長掌筋には以下のような様々な形態的変異が報告されています (Reimann et al., 2004):