大静脈孔 Foramen venae cavae
大静脈孔は、横隔膜に存在する3つの主要な開口部の一つで、下大静脈が通過する重要な解剖学的構造です (Gray and Carter, 2010)。以下にその詳細な特徴を記述します:

J0433 (横隔膜:腹腔からの図)

J0434 (横隔膜:腰部、腹腔からの図)
解剖学的特徴
- 位置:横隔膜の腱中心の右部に位置します (Standring, 2015)
- 正中線からの関係:正中線より約2.5cm右側にあります
- 脊椎レベル:第8-9胸椎の高さに相当します (Moore et al., 2018)
- 形状:楕円形で、直径約2.5cmです
- 構造:腱性の縁で構成されており、固定された開口部となっています (Sinnatamby, 2011)
- 通過構造:下大静脈(直径約3cm)と右横隔神経の小枝が通過します
機能的意義
- 循環系における役割:下半身からの静脈血を右心房へと運搬する通路となります (Ellis, 2010)
- 呼吸との関連:横隔膜の収縮・弛緩に伴い、下大静脈の血流量が変動します
- 静脈還流の調節:横隔膜の運動により「ポンプ作用」が生じ、静脈還流を促進します (Netter, 2018)
臨床的意義
- 横隔膜ヘルニア:まれに大静脈孔周囲で横隔膜ヘルニアが発生することがあります (Skandalakis et al., 2009)
- 下大静脈圧迫症候群:腫瘍や血栓により大静脈孔部分で圧迫が生じると、下肢浮腫などの症状が現れます (Dudek, 2014)
- 手術的アプローチ:肝臓手術時には大静脈孔周囲の解剖を理解することが重要です (Blumgart, 2016)
- 画像診断:CT・MRIで横隔膜の大静脈孔を評価することができます (Yamamura et al., 2017)
大静脈孔は、腹部と胸部をつなぐ重要な通路であり、下大静脈の保護と正常な静脈還流の維持に不可欠な構造です。他の横隔膜開口部(食道裂孔、大動脈裂孔)とともに、体幹における主要な交通路を形成しています (Drake et al., 2019)。