胸骨上隙
胸骨上隙(Suprasternal space)は、頚部の重要な解剖学的構造であり、以下の特徴と臨床的意義があります(Standring, 2016):
解剖学的特徴
位置と境界
- 位置:胸骨切痕(jugular notch)の直上に位置し、頚部の前面にあります(Moore et al., 2018)。
- 境界
- 前方:皮膚および頚部浅筋膜
- 後方:頚部深筋膜の気管前葉
- 上方:頚部浅筋膜の層板
- 下方:胸骨上縁
内容物と構造
- 疎性結合組織および脂肪組織
- 前頚静脈弓(jugular venous arch):左右の前頚静脈を結ぶ交通枝(Drake et al., 2019)
- リンパ管およびリンパ節(存在する場合あり)
- 胸骨舌骨筋および胸骨甲状筋の起始部(Loukas et al., 2014)
臨床的意義
手術的考慮点
- 頚部手術における重要なランドマーク(Sinnatamby, 2018)
- 前頚静脈弓の損傷に注意が必要
- 気管切開術における解剖学的指標として重要(Mallick et al., 2016)
病理学的意義
- 頚部感染の波及経路となる可能性がある
- 甲状腺腫大時の進展空間として重要
- Ludwig's anginaなどの深頸部感染症の進展経路(Vieira et al., 2008)