

J1025 (一部が耳介から切り出された右耳介軟骨と耳介筋:外側からの図)

位置と形態
前耳介筋(Musculus auricularis anterior)は耳介の前面に位置する扁平な小型筋肉で, 側頭筋膜(fascia temporalis)の前外側部から起始し, 耳介軟骨の前方部分(耳輪脚)に停止します(Gray, 2020; Standring, 2016)。この筋肉は薄い筋束で構成され、線維方向は後外上方に向かいます(Moore et al., 2018)。
神経支配と血液供給
前耳介筋は顔面神経(第VII脳神経)の側頭枝によって支配されており(Netter, 2019), 浅側頭動脈からの分枝により血液供給を受けています(Standring, 2016)。
主要な機能
前耳介筋の主機能は耳介を前上方に引き上げること(いわゆる「耳をとがらせる」動作)です(Gray, 2020)。しかし、ヒトでは退化的構造であり、機能的意義は低下しています(Moore et al., 2018)。
個人差と随意運動
前耳介筋には著しい個人差があり、約23%の人では完全に欠如し、50%以上で部分的発達のみが認められます(Shimada and Gasser, 2017)。意識的な訓練により一部の人では自発的に収縮させることが可能です(Schuster, 2012)。
臨床評価における意義
顔面神経麻痺の評価時に補助的検査として利用される場合があります(House and Brackmann, 1985)。また、驚きや注意の表情時に無意識に活動することがあります(Ekman and Friesen, 2003)。
耳介筋群の構成
耳介周囲の筋群は前耳介筋、上耳介筋、後耳介筋の3つから構成されます。これらはすべて第二鰓弓由来で顔面神経支配を受けます(Carlson, 2019; Sadler, 2019)。
比較解剖学的視点
他の哺乳類では耳の方向転換に重要な役割を果たしますが、ヒトでは退化しています(Romer and Parsons, 1977)。機能的階層において、上耳介筋が最も広範な動きを可能にし、前耳介筋と後耳介筋は補助的な役割を果たします(Standring, 2016)。
電気生理学的特性