輪帯(股関節の)Zona orbicularis articulationis coxae

J0332 (右股関節:後方からの図)

J0334 (右の股関節:前面切断図、前方からの後部切断図)
解剖学的構造
股関節の輪帯は、股関節包の深層に存在する特殊な線維構造です(Gray, 2020; Standring et al., 2016)。この構造は以下の解剖学的特徴を持ちます:
- 関節包の内面、特に滑膜層の深部に位置する輪走線維束から構成されています(Tortora & Derrickson, 2017)。
- 大腿骨頚部を取り囲むように走行し、特に大腿骨頚の中央部から基部にかけて顕著に発達しています(Moore et al., 2018)。
- 上方では腸骨大腿靭帯(Ligamentum iliofemorale)の深層線維と密接に結合し、下方では坐骨大腿靭帯(Ligamentum ischiofemorale)の深層線維と連続しています(Netter, 2019)。
- 寛骨臼縁から起始する輪状線維束として記述されることもありますが、輪帯の主要部分は大腿骨や寛骨臼と直接骨性結合を持たず、関節包内で独立した線維束として存在します(Platzer, 2013)。
- 線維の配列は主に横走・輪状であり、関節包の縦走線維とは異なる走行を示します(Sobotta, 2018)。
組織学的特徴
輪帯は密性結合組織から構成され、コラーゲン線維が高密度に配列しています(Ross & Pawlina, 2016)。この線維配列により、大腿骨頭を機械的に固定する役割を果たします。
機能的意義
股関節輪帯は、以下の重要な機能を担っています:
- 関節の安定性維持:大腿骨頚を絞扼するように取り囲むことで、大腿骨頭が寛骨臼内に保持されるのを助けます(Neumann, 2017)。特に股関節の外転・外旋位において安定化作用を発揮します。
- 関節包の緊張調整:股関節の運動に伴う関節包の弛緩を制限し、過度の関節包伸展を防ぎます(Kapandji, 2019)。
- 血管供給への影響:大腿骨頚部を取り囲む構造として、大腿骨頭への栄養血管の走行に影響を与える可能性があります(Drake et al., 2020)。
臨床的重要性
股関節輪帯は、以下の臨床的状況において重要な意義を持ちます:
- 股関節脱臼:輪帯の緊張が失われると、股関節の不安定性が増加し、脱臼のリスクが高まります(Weinstein et al., 2015)。先天性股関節脱臼(発育性股関節形成不全)では、輪帯の発達不全が関与している可能性が指摘されています。
- 大腿骨頚部骨折:輪帯の存在により、骨折部の血行が障害されやすく、特に大腿骨頭壊死のリスクに関連します(Egol et al., 2019)。