
J0327 (右側の仙腸関節:前頭断、前面からの後半部分の図)
後仙腸靱帯は仙腸関節の後方を補強する強靱な靱帯構造であり、深層部と表層部の2層から構成されています(Vleeming et al., 1996)。
**起始:**仙骨の後部粗面(facies posterior ossis sacri)および外側仙骨稜(crista sacralis lateralis)
**走行:**骨間仙腸靱帯の直接的な延長として、外上方へ斜めに走行する短く強靱な線維束
**停止:**腸骨の仙骨盤面(facies sacropelvica ossis ilii)近傍、仙腸関節の後縁に沿った領域
**特徴:**深層部は骨間仙腸靱帯と連続性を持ち、仙腸関節裂隙の直後方で関節包を補強します。線維の配列は比較的水平に近く、関節の前後方向への動きを制限します(Standring, 2020)。
**起始:**外側仙骨稜の下部(第3仙椎レベル以下、S3以下)
**走行:**深層部よりも長く、ほぼ垂直に近い方向で外上方へ走行
**停止:**主に上後腸骨棘(spina iliaca posterior superior, PIPS)およびその周囲の腸骨稜後部
**特徴:**表層部は深層部よりも長大で、皮下でも触知可能な位置にあります。外側の線維束は仙結節靱帯(ligamentum sacrotuberale)の内側縁と密接に連結し、機能的に一体化しています(Vleeming et al., 1996)。
後仙腸靱帯は密性結合組織から構成され、コラーゲン線維(主にI型コラーゲン)が規則的に配列しています(Sakamoto et al., 2001)。靱帯内には機械的受容器(メカノレセプター)が豊富に存在し、固有感覚情報の伝達に関与しています。また、侵害受容器も存在するため、靱帯の損傷や過度の伸張は疼痛の原因となります(Szadek et al., 2008)。
**仙腸関節の安定化:**仙腸関節は数ミリメートル程度のわずかな可動性を持つ関節ですが、後仙腸靱帯はこの関節の後方安定性を提供し、過度の前方剪断力や回旋運動を制限します(Vleeming et al., 1990)。
**力の伝達:**体幹から下肢への、または下肢から体幹への力の伝達において重要な役割を果たします。特に歩行、走行、ジャンプなどの動作時に重力や地面反力を効率的に伝達します(Snijders et al., 1993)。