肋横突靱帯 Ligamentum costotransversarium

J0306 (肋骨と関連する椎骨と靱帯:上方からの図)
解剖学的構造
肋横突靱帯は、胸椎の横突起と対応する肋骨の頚部(肋骨頚)を連結する強靱な線維性結合組織です(Standring, 2020)。この靱帯は以下の詳細な解剖学的特徴を有しています:
- **位置と走行:**横突起の前面と肋骨頚の後外側面の間に位置し、ほぼ水平方向に走行します(Moore et al., 2018)。
- **構造:**強く短い膠原線維束から構成され、密性結合組織により形成されています。線維は横突起の骨膜から肋骨頚の骨膜へと連続しています(Neumann, 2017)。
- **肋横突孔(Foramen costotransversarium):**この靱帯と骨性構造により囲まれた小さな孔を形成します。この孔は頚椎における横突孔に相当する構造で、背側枝の血管や神経が通過します(Standring, 2020)。
- **周辺構造との関係:**上肋横突靱帯(Ligamentum costotransversarium superius)および外側肋横突靱帯(Ligamentum costotransversarium laterale)とともに、肋横突関節の靱帯複合体を形成します(Netter, 2019)。
機能的役割
肋横突靱帯は胸郭の生体力学において重要な機能を担っています(Kapandji, 2019):
- **安定化機能:**肋骨と胸椎の連結を強固にし、胸郭全体の構造的安定性を維持します。特に回旋運動や側屈運動時の過度な可動性を制限します(Neumann, 2017)。
- **呼吸運動の制御:**呼吸時の肋骨の挙上と下降運動を適切に誘導し、効率的な胸郭の拡張と収縮を可能にします(Moore et al., 2018)。
- **力の伝達:**脊柱から肋骨へ、または肋骨から脊柱への力学的負荷を適切に分散・伝達します(Kapandji, 2019)。
臨床的意義
肋横突靱帯は様々な臨床状態に関連しています:
- **肋横突関節症候群:**外傷、過度の運動、または変性変化により肋横突靱帯に炎症や損傷が生じると、背部痛や肋間神経痛様の症状を引き起こすことがあります(Bogduk, 2012)。
- **胸椎の可動性制限:**靱帯の線維化や石灰化は、胸椎の回旋可動域を制限し、呼吸機能の低下や姿勢異常の原因となることがあります(Neumann, 2017)。
- **外傷:**強い回旋力や直接的な打撲により、肋横突靱帯の部分断裂や完全断裂が生じる可能性があります。これは胸郭の不安定性や慢性疼痛の原因となります(Moore et al., 2018)。
- **手術解剖:**胸椎後方アプローチの手術(椎弓切除術、後方固定術など)において、肋横突靱帯は重要な解剖学的指標となります。靱帯の切離が必要な場合もあり、術後の安定性に影響を与える可能性があります(Standring, 2020)。