蓋膜 Membrana tectoria
蓋膜は、頭蓋頚椎移行部における最も重要な靭帯構造の一つであり、後頭骨と上位頚椎間の安定性維持に不可欠な役割を担っています (Tubbs et al., 2011)。以下に解剖学的特徴と臨床的意義について詳述します。

J0299 (後頭骨、第1および第2頚椎とその靭帯(第3層):後方からの図)

J0301 (後頭骨および第1から第3の頚椎、靱帯(第二層):後方からの図)

J0302 (後頭骨と最初から三番目までの頚椎を含む正中矢状断とそのリング状の組織:左方からの若干図式化された図)
解剖学的構造
起始・停止と走行
- 蓋膜は軸椎(第2頚椎)椎体後面から起始し、上方に向かって広がりながら走行します (Standring, 2020)。
- 上行する過程で環椎(第1頚椎)の後弓を越え、大後頭孔の前縁を通過して後頭骨の斜台(clivus)内面に強固に付着します (Crisco et al., 1991)。
- 側方では外側環軸関節包と連続性を持ち、頭蓋頚椎移行部全体の安定化機構に統合されています (Standring, 2020)。
組織学的特徴
- 蓋膜は後縦靱帯の上部延長部として形成される強靭な幅広い線維性膜であり、密性結合組織から構成されています (Standring, 2020)。
- 主要な構成成分は膠原線維(主にI型コラーゲン)であり、一定量の弾性線維も含まれることで、強度と柔軟性のバランスが保たれています (Panjabi et al., 1991)。
- 血管分布は比較的乏しく、このことが損傷後の治癒過程を遅延させる一因となります (Saldinger et al., 1990)。
- 神経支配については、後頭下神経や大後頭神経からの知覚線維が分布しており、頚部痛の発生に関与する可能性があります。
層構造
- Fick (1904)の古典的研究によると、蓋膜は表層と深層の二層構造を持つことが明らかにされています。
- 深層部は後縦靱帯上部の特に強固な部分を形成し、その線維束は表層の後縦靱帯より短く密に配列しています (Tubbs et al., 2011)。
- 下端は第2〜3頚椎体レベルで後縦靱帯に移行し、頚椎全体の後方安定化機構と連続しています。
解剖学的関係
- 蓋膜は環椎十字靭帯(特に横靭帯)を後方から広く覆い、保護層として機能しています (Menezes, 2008)。
- 横靭帯は軸椎歯突起を環椎前弓に固定する重要な構造であり、蓋膜はこれを補強することで環軸椎の安定性に寄与します。