関節円板(顎関節の)Discus articularis temporomandibularis
顎関節の関節円板は、下顎頭と側頭骨の下顎窩の間に位置する線維軟骨性の構造で、顎運動の円滑化と負荷分散において中心的役割を果たします(Tanaka et al., 2008)。この解剖学的に複雑な構造は臨床的にも重要な意味を持っています:

J0284 (右側の顎関節:外側からの図)

J1028 (右外耳道の水平断面:上方からの図)
解剖学的特徴
- 形態:中央部が薄く(約1mm)、前後方向に厚い(約2-3mm)楔形の構造を呈し、上面は凹凸、下面は凹状の二重凹面構造を持っています(Okeson, 2019)。
- 組織学:主に密な線維性結合組織から構成され、前部では散在性の軟骨細胞を含む線維軟骨で構成されています。中央部は無血管性で、圧縮力に対する耐性があります(Milam and Schmitz, 1995)。
- 後部組織:後部は上下2層の構造(二層性後部付着)を示し、上層は弾性に富む上関節腔後部組織として下顎窩の後壁に固定され、下層は下顎頭の後壁に付着しています(Scapino et al., 2006)。
- 前方部:関節包および外側翼突筋の上頭部と強固に結合し、この筋によって前方に牽引されます(Murray et al., 2001)。
- 血管分布:周辺部のみが血管に富み、特に後部付着部は豊富な血管網(後円板部)を形成しています(Cascone et al., 1999)。
- 神経支配:三叉神経第3枝の耳介側頭神経からの感覚神経支配を受けています(Willard, 2012)。
機能的意義
- 適合性向上:関節頭と関節窩の不適合を調節し、顎関節の複雑な滑走・回転運動を可能にします(Piette, 1993)。
- 負荷分散:咀嚼時の圧力を分散し、関節構造を保護します(Nickel et al., 2003)。
- 関節腔分離:上関節腔と下関節腔を完全に分離し、それぞれ異なる運動様式(上関節腔は主に滑走運動、下関節腔は主に回転運動)を担っています(Gallo, 2005)。
- 潤滑機能:関節液の分泌と分布に関与し、摩擦を減少させます(Nitzan, 2003)。
臨床的意義
顎関節障害(TMD)の病態と関節円板
関節円板は顎関節障害(Temporomandibular Disorders: TMD)の発症と進行において中心的役割を果たします。TMDは咀嚼筋系の痛みや機能障害、関節雑音、開口制限などを特徴とする疾患群で、その有病率は一般人口の5-12%に達します(Peck et al., 2014)。
関節円板転位の分類と臨床症状
関節円板転位は大きく以下のように分類されます: